第91話
一瞬花が舞い時が止まった。
時間にして5分ほどだろうか。長い沈黙の後、息継ぎをするように櫻井さんが私にこっちの席へおいでと言ってくれながら、「花吹に振ったお前が悪い、瑞樹」と私たちへ酸素を与えてくれた。
わーい……酸素酸素酸素!!!!
「花吹は俺等みたいに薄汚れた大人とは違う、本物だから」
「俺等って、俺も?」
「相良も」
「はー…」
「…えー。俺は違うよね、王子様でいたい」
「だめ。違う。シー」
「聖くん!?今の顔ちょお王子様だったけど!?俺ドキッとしたけど!?ブーム!?ブームに乗ったの!?わああずるい、ずるいや!」
「ウルセェ オマエ モットモ クズ」
!?珍しく櫻井さんが乗っかって笑っていると思ったら。
何か幻聴が聴こえたような。だって一瞬で高橋さんが驚異的な震えを見せている。
その後復帰した彼の膝の上どうぞ?アピールを通り過ぎて、席を空けてくれた御ふたりの最奥、花吹さんのとなりに落ち着く。
櫻井さんとの間になるけれど、右の体温が高くて熱い。
そして、流石に四人は狭い。ごめんなさい。
「相良。どうしてこうなったんだっけ」
「オゥイ。いいけど羨ましい」
貴章が演技っぽくテーブルの上の拳をダンッと弾ませた。
「けど花吹と灯だって色々困難乗り越えたんだよな?信じられねぇくらい初心(ウブ)だけど。初心だけど。逢って何年め」
「「春で3年?」です」
「ええええ」
すると隣で、彼がふわりと微笑んだのがわかった。
「…ありがとうございます。それで、相良さんの話は」
「花吹ありがと。…それで。まー超美形な弟出てきたり、」
「へええあべちゃんの弟さん!」
「ほぉ。それに関しては宇乃くんの親友、山下調査員が張り切って貰っていってくれそうだね」
「はい櫻井さん。我が友、その内嗅ぎつけて持っていくでしょう」
「うぇ」
高橋さんが首を絞められたように声を出して、花吹さんは恐らく生野くん――山下調査員の彼氏殿がここにいないことを思って笑った。
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