第81話

「相良はこの課なー」



課長の声が聞こえて、はっとした。


視線を上げれば丁度視界に入ってきた、さっきはもっと遠くに姿を見た…そのひと。



「お疲れさまでーす」


「お疲れ様です」


「……」


私の隣に座られていた佐伯さんの向かいに腰を下ろすその人の姿を気にしていると、目が合ってしまって。


肩が、


跳ねる。



ワアア。



わああどうして今跳ねてしまったのMy肩……!


するとすぐ笑顔に変わって、私は、佐伯さんの視線も気付かないままどうしたらいいかわからなくなって、でもただ下を向くのは失礼だと思って、視線すら動かせないで固まっていた。


「…おいひろし」


耳元で、社内でも有数の最強の声を持つとされる佐伯さんの声が響く。



ダブルドッキリで転げ回りそうになった。


「耳まで赤いけど。恋愛禁止。な」



相良さん、の見ている前でイイ声は続き訳も解らぬままコクコクと頷く。ぎぇぇ。


ちがう。ちがうちがうちがいます佐伯さん。



「さて相良さん。この不格好な小動物の名はひろしです」「ひぇ」



「ひろし?」


まさかの佐伯さんからご紹介に預かりました。



こ、はい光栄です(何故かドヤ顔)佐伯さん…。けれど私、あの、ひろしじゃな…「相良貴章です、宜しくお願いしますねひろしせんぱい」



「わっ、はいっお疲れ様です!!」


「今?」



ひろしです~~。


またタイミング逃してしまいました。





その後。



相良さんは具合を悪くして倒れてしまった元同僚、商品企画の宇乃さんという女性に咄嗟に気付いて抱き上げ、運んだことで紹介初日からその人気を博すことになった。




「王子が来たね、ひろし……」


「はぁい、佐伯さん……」




本当に、初日から凄くて。


ヒーロー、みたいな方。



だから、ありえない。

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