第70話

『あ、でもそれしか替えないんだった。パジャマ』



小さく小さくなったニットを受け取りながら言った相良さんに『!!』と再び飛び上って胃が痛む。



『い、今すぐ買っ『いい。今日は俺と、一日中いちゃいちゃしましょう』


『え!?』



彼は真赤な私を見てはにかみ、大丈夫だと言って手を引く。自室のクローゼットを開け、しゃがんで一枚の大きなニットを取り出した。



それは、マスタード色のニット。



『これ何だっけなー。確か大学の時誰かが海外旅行の土産に送ってきたんだけど、どう見たって外人さんサイズ』


ムーと唇を尖らせてそれを手にする。




相良さんは小さくなったニットも、今日はいい天気だから干そうかと言って笑った。






やさしいやさしい相良さん。



…私は、貴方を困らせてばかりいませんか?







数日が、経って。



挽回を考えていた私は、或る日相良さんが『観たいなー』と呟いていた映画のチケットを取って、今度のお休みの日に突然お誘いしようと目論んでいた。



ご飯の場所も、勝手ながら探して予約した。




私は相良さんが笑ってくれるのを、当たり前だとは思っちゃいけない。

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