第69話
――それから、数日。
日曜日の朝。
目覚ましをかけないで許される――――幸せな日。
俺は、
無意識下で左へと伸びた指先を動かした。けれど返ってきた冷たいシーツの感触に薄らと瞼を持ち上げて。隣に居たはずの阿部がいないことに気が付き、起きる。
「…なんじ」
呟くと同時に洗面所の方から洗濯機の洗濯終了音が聞こえた。
身体を起こして欠伸をしながら進んだ廊下の途中、明かりの漏れる洗面所を覗くと、洗濯機の前に立つ阿部の小さな後ろ姿が見えた。
立ち止まる。
捲っていたパジャマの裾を戻して。
「あべ?」
掠れたままの声を掛けた途端、思い切り肩を跳ねらせる彼女は恐る恐るこちらに振り返った。
顔が、真っ青だ。
手には何かを持っていた。
「に、にっ、せんたくき…っ」
「ぶ」
爆笑だった。
彼女の手には、俺の小さく小さくなったニット。
というかパジャマとして使ってたやつ。
見た限り、うっかり洗われてしまったようだ。
「ほ、本当にごめんなさ…「いーよ」
思い切り笑った後で小さな笑みを残したまま、彼女に寄り添う。
「お前でも着れないサイズにしたんだ?――…飯、作ろっか」
腕の中にすっぽり収まる彼女が心底愛おしい。
寝ても覚めてもいとおしかったから、いい。
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