第55話

「バカなのかな」




二つ返事で返した。



ちいさなおじさんは「えっへっへ」と笑い方を変えた。



「そうですおじさんはバカです!お酒頂戴よ~~けーさつの坊や」




「はー……」




据え膳。酔っ払っているからかさっき本人がそう言っていたようにぽかぽかと体温を伝えてくるそれは目を離すと何かやり出すようで。



寄りかからせたまま遠くを見つめた瞬間、ガチャリと重たい金属音がしたと思った時には遅かった。




不審に思って手元を見遣ると、右手首に、あれ?




手錠?




一応回転し続ける頭でまさかと勘付いた時、阿部が目下でドヤッとしていることがわかった。





「……阿部?」



「おじさんだも~ん」



「おじさん。いやおっさん」


「おう!」




おう!じゃねぇよ。



「これの鍵は?」




「貴方の心のな・か・に」

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