第53話
「ふっふふふー」
奇妙な声の主は、当然(俺ら以外に何かがいない限り)阿部だったわけだけど。緩々とした笑い声が響いている。
勿論普段彼女はこんな間の抜けた笑い方をしない。もっと、仄かに、目が合うと笑っていたというような、やさしい笑み方をする。
まだ笑ってる。
「ふふふ、ふふふ」
何が面白いんだ?目は笑ってないけど。
「あのー、阿部さん?」
阿部は、寄りかかったままこちらを見上げたまま、不敵な笑みを口元のみに湛えたまま。「阿部さんではない!」と怒った。
怒った…………。貴重だから二度いう。
「ど、うぼうさんとよべ!…それかおじさん」
はい?
どうした?
怒っているのかと思いきや、今はもう既にケタケタと笑っているから酔っ払っていることはわかる。そんなことはもうわかってる。寝る方かとは、思ったんだけど。たった今まで。
「どうぼうさん?」
問うと、「ちっがぁーう!」と声のボリュームを大きくしながらドン、と胸を叩いてきた。
「ど、ぼうさんよ……。けーさつめ」
警察?
ってことは、あー。どうぼうじゃなくて泥棒?
それがなに。意味わからん。
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