第48話
あああもう、今すぐ抱き上げて病院連れて行きたいくらいだけど。
水持って来る、とソファに座らせてキッチンへ戻る。
予定が狂っていく。なのに、背徳。目に留まるもの全てが“自分のもの”なわけで、どんな言い訳があろうと此処は男の家。
酔わせた彼女を見て、重く良心に圧し掛かって抜け出せないくせに。
本心は帰したくない。いてほしい。ここに。
…傍に。
コップを手にする前に一度冷蔵庫に頭を打ち付けた。
ごめん。
ごめん、阿部。
けど、善からぬ考えは晴れない。もう一度打ち付けて冷静になって彼女の元へと戻った。
「水」
理性という名の距離を保って隣に腰を下ろし、冷たいコップを差し出すも彼女はふわふわと笑みを浮かべるだけ。
「みーず」
「んん」
何?
何か、渋ってる。
ちょっと無理に持たせようと細い手首を引くも、手の平で間に壁を作られてイヤイヤとそっぽを向いてしまう。
「は、何」
何度やっても飲まない。
先にコップが水滴を浮かべ始める。
「…じゃ、二択な」
「…に?」
「ここ以外の家に強制送還されるのと今ここで強制的に俺に水飲まされるの。どっちがいい?」
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