第47話

「阿部!!」




ガシャン、と手にしていたコップを放って傍へ行き彼女の手の中に抱えられていたものを上から取り上げた。


緩められた手が宙に残される。




「飲ん―だ……」



呟き、膝をついて顔を覗き込む。


声に驚いたのか見上げてくる表情に危うく気が抜けそうになった。けど取り上げたものを見れば口は開いていて中身は減っている。





旅行土産のそれは一合とはいえ地酒。勿論、進んで阿部に飲ませる気はなかった物だった。



飲ませる、っていうかこれほぼ俺用……。



彼女を見ると少し赤らんだ顔で「ごめんなさい、喉が渇いて、リュックから見えたのでラベルも確認せず、ごめんなさい」と謝ってくる。




「強かっただろ……」



きょとんとした阿部はぽやぽや喋りだす。



「はいすごく、ごくごく飲んだら喉がカーッてなりました。身体がぽかぽかして、もうさむくありません、あついです」




ごくごく飲んだのか!!




「あっでもだいじょぶです、正気です。相良さんはすごいですねぇ。こんなカーッてなるお酒も飲めるなんて…尊敬します」




「そんなこと尊敬しなくていいから…あべさん、酔いっていうのは急にくるんだぞ」



「はい~」


「…解ってる人ははいとは言いません」

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