第44話
それからふと微笑う。
「あー、それは……。バカ」
濡れた手で、右どなりの朱い頬を摘む。
すると彼女は右目を擦った。
「アッ!!」
あろうことか、ハンドソープを纏った指先で。
「っ」
ばか!ともう一度叱って、慌ててこっちと腕を引く。弁解どころじゃなくなってるし。もー…。
何だかんだ、阿部がしている誤解も含めて笑ってしまいそうになる頬を引き締めた。
するとぐずぐず言わせながら大人しく従って、両手首を握られて目を瞑ったままこっちに顎を上げる彼女が目の前に。
「……」
ウワァ、これは……。
……生
「さがらさ…?」
「!」
不安げに零れた声に驚いて、鏡に映った雄要素滾る自分を一蹴して、急いで手と目を洗わせた。
俺、吸血鬼とか狼じゃなくてよかった…。
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