第41話
「相良さん?」
「…下ろしたくない」
「…ぇ」
年上のくせに、わがまま。
何かに染まったこともないような柔らかい髪は廊下からの明かりを浴びて、それよりもっと柔らかく朱い頬に触れて、下がり眉の下のやさしい眸が気遣わしく俺を見つめていた。
光にすら溶かされてしまいそうだと想った。
弱くて溶かされてしまうんじゃなくて。彼女はきっと、溶かされることを“許して受け入れて”一部にだってなる。
すると、ちいさな手の平が腕に触れてきた。
「腕が、しびれてしまいます」
そうやって、恥ずかしそうにはにかんだりするから。
すきだと、想う。
「…………はぁ」
彼女のあまさに負けて下ろしながら溜め息を吐けば傍で怖がるから、ああ、そういえばこんなことになる前にも自分の溜め息にこんな反応をしていたかもしれないなと思い出した。
ズキ、と痛む胸は彼女が感じた半分にも満たないかもしれないけど。
再び見下ろす彼女に向かって口を開いた。
「阿部。掘り返すようで悪いけどこのままにしておきたくないから聞くな。何で嫌いだとか勘違いしたわけ?」
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