第38話
{*さいどたかあき*}
ドン、と。傍にきた小さな身体から伸びた細い腕が、恐る恐る首に回されて、
静止。
ナニこの可愛い生きもの。
肩に外の寒さで赤くなっていた頬を寄せた阿部から、すん、と洟をすする音がしてそっと抱きしめ返した。
多分、この可愛い生きものはあまいし、少し酔ってもいるようだから殆ど解決していないことにも気が付かないで俺に絆されているだけだと思う。
けど。
今日会うまでの間、色んなことを悩んだのだと思う。
俺は或るときから阿部のことが好きで。だから彼女の口から零れる『すき』が、そのたった二文字がしぬほどいとおしい。
けどその或るときを彼女に話した記憶はないし、逆もまた然り。彼女がいつから想ってくれたのか。
知らない。
今はまだ、今だけの想い。それしかないから不安もあるのかもしれない。過去も、未来もない。過去はこれから知ることがあるだろうけど、未来は。
俺も、考えてる。
その時がきて、今この腕の中にいる彼女がどんな道を選んで歩んでいけたらしあわせか。
だから、今限定。
この腕の中の大切なひと。
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