第33話

小刻みに震えた手で涙を拭いて顔を覆いたかったけれど塞がれた手ではできなくて。


俯いて、みっともなくぼろぼろと零した。





「…やっと、ちゃんと泣いた」





そうっと、小さな声が胸の奥に届いた。


彼は、掴んでいた手首からするりと指先を通して手を握った――ううん。




こいびと、つなぎ。




感覚が這ってビクリと肩が跳ねる。



もう、押さえ付けられていない。彼はその、繋がったふたりの手を持ち上げて頬を寄せた。




「何度も好きだっていった」





真剣な眸。



その通りだった。




相良さんは、いつだって真っ直ぐ言ってくれた。




「信じられなかった?」



彼はその場にしゃがみ込んで、顔を覆った指の隙間から私を見上げた。



捉えられた綺麗な眸はどこか疲れを帯びていて、気が付いた私は洟が垂れないよう気を付けながら、私の相手なんかと言いかける。


「緩菜さん、それ以上言ったら怒りますよ。何度でも言うけどその人俺の好きな人だから」




「相良さんの好きと私の好きは…違…」


「どういうこと。内容に寄っては帰さないけど…」

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