第32話
すきになってごめんなさい。
相良さんには、私が言うまでもないけれど、もっと可愛くて優しくて、相良さんに似合う方がいると思っているってことも言って。
それから、終わりにしてください。
お願いして。あとは、ああ、そうだ。
好きだと言ってくれてありがとうございました。
そう言わなきゃいけなかったんだ。
謝って、終わりにして。
それくらいしかできないくせに。
「緩菜」
私が聞くのには勿体ないくらいやさしい声が響く。
「何?」と促してくれて、口からぼろぼろと音を立てた本音が零れ落ちていった。
「……自分。自分のことが、恥ずかしいんです。嫌いなんです、誰よりも。一番。嫌いです。大嫌い。ずっと、ずっと、今も……」
言わなきゃいけなかった。
謝らなきゃいけなかった。
終わりにしなきゃいけなかった、わたしから。
でも、いえなかった。
だからそんな私を『すきだよ』と言ってくれる貴方が心のどこかで信じられなくて。
だから、そんな風にすきなひとを信じられない自分を益々嫌いになっていく。
繰り返し、繰り返し、私は私が一番“きらい”だ。
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