第25話
その時、後ろから聞こえてきた声が胸を刺す。
「ん?」
声を聴いて私を見たのばらさんは小さく疑問を零して、すっと私の背中と、恐らくその声の持ち主……相良さんの間に割って入った。
「かんなちゃん、あの人?」
同じくらいの小声でのばらさんは問う。
「……どちら様」
さっき電話越しに聞こえていた相良さんの声がすぐ後ろで聞こえる。私は、まだこれから先どうしたらいいのか考えていなかったことを焦る。
「随分可哀想な彼女さんだったから」
私を指したやさしい声色が冷たい空気に響く。
「彼女、貴方の前で泣かないですか」
「――――」
相良さんが何か言ったように思えたけれど何も聞こえなくて―その代わりにのばらさんから笑い声が聞こえた。
「僕もう戻りますね。…ティッシュ、受け取ってくれてありがとうございました」
くしゃりと髪に線の細い指先が触れたかと思えばこちらこそのお礼を返そうとした私を一瞥して行ってしまった。
「……阿部?」
いつのまにかふわりと覗き込まれて、身体が硬直する。顔が、見れない。
相良さんはそんな私の手をとって歩き出した。
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