第18話

確かそれほどお酒に強くないうみちゃんが言うのだ。大丈夫だと思い込んで口にした。



「…おいしい!」



ほろりと香る程度のアルコールに零すと、彼は満足そうに口端を上げて笑みを作った。




「はぁ、かんなちゃんがどこぞのクソ女みたいに愚痴るようなやつだったら俺ら苦労しないんだけどなー」



ぼそりと零された言葉は拾い切れず、首を傾げると目が合う。



「何でもないよ。そいつ…その恋人に不満があったら、一ミリでもあったらすぐ言ってね」



「あ、ありがとう、でも大丈夫。本当に何もないんだ。不満があるとしたら、わたしの方じゃなくて」




「……かんなちゃんに不満あるとか」



こくこくとお酒は進んだ。




また、目が合う。




突然うみちゃんはどこから取り出したのか、自分の指先に手錠を引っ掛けていた。




「え…」



本当に突然。


視界に現れた――見慣れないモノ。




「え、と?それは?」



「勿論本物じゃないよ、小道具。貰って来ちゃった」




語尾にハートを付けるように、貰ったのではなく盗んだのではないかと思うように微笑む彼はそのままそれを呆ける私のグラスを持つ手首に一連の流れで掛けた。




「……」




「重くないでしょ?」


「う、ん」




その時、鞄の中から着信を知らせるバイブ音が響く。



「電話鳴ってるよ。出てきな」






う…んん?

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