第16話
――――――――…
「かーんなちゃん!」
1月28日。
夜。
仕切られた個室の暖簾を、細い指が掬った。
会う度大人びていく顔を覗かせ、奥の誰かに引かれた手から逃れるように小さな個室に入ってきたのは弟の“うみちゃん”。 彼。
少し心配そうな表情のままお盆から下ろしたグラスをテーブル上に置き、掘り炬燵の向かいに回っている。
「うみちゃんもう上がり?」
海色の髪と一緒によく似合う、より濃くした色のケーブルニットに着替えていた彼は頷いて、それから印象的に、はにかんだ。
「?そっか、おつかれさまです」
側に既に置いてあったグラスを手にする彼に言った。
水かお酒かわからない透明なそれは小さな口へと流し込まれ、
「んーん、今日元々仕事入ってないから。かんなちゃん一人で来るって言うから来たのにバレて手伝いさせられただけだし」
「えっそうだったの」
うん。ちらりと伏せられる睫毛が不満を物語っている。
「ごめんね…そうだよね今日私服だもんね」
というのも、弟は普段、わけあって中性的な格好をしているのだ。
因みに似合うというのも失礼なくらい可愛さにおいてクオリティの高い彼には、女子としても頭は上がらない。
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