第13話

「あの、私と…「大学の友だちと」




旅行するから。



眩しく笑う、相良さん。彼に届かないくらいの小さな声しか発せられなかった私を真っ直ぐ見て。



そっか。


お友だちと旅行。



「……、」


その時、見上げたまま目に映って。


わかったのは。


私と目が合ったとき逸らされてしまった視線も、ちゃんと合わせてくれていたこと。だから、楽しみなんだろうなって。すぐ。



…だから。一度唇を結んで。



「いってらっしゃい、です!」



すると、お土産何がいいかなと笑い返してくれる。




白い吐息が宙に溶けて。


青に変わる信号。




「あれ、何か言いかけてた?」



大嫌いな下がり眉。


下がって、彼を不安にさせてしまわないだろうかと怯えながら、「いえ、何も」と下手に微笑う。



それも、心配は要らなかった。


だって彼はまた私から目を逸らした。






もうすぐ、彼の手をとって一ヶ月になる月夜。





――…『一ヶ月記念て何だよ』



憧れは、憧れのままでいいと思う月夜になった。

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