第2話
我ながら憂いを帯び、美しく溜め息を吐く感じで悩ましげな視線を上げると、目前で思いきりにまにま顔を曝した灯と目が合った。
「……」
正直目を逸らしたい。
始めはにまにまという感じで可愛げこそあったもののその内表情は崩れ、にまにまどころじゃなくなってきた。にやにや…から更にはニタァ…という感じに変わる。
口は波打ち、顎は前へ前へと競って出てくる。
「怖い」
キケン要素の高い顔に、その顔はどうかと思う、と冷静に指摘。
「絶世の美女に何ということを」
むぅっとして俺の視線を辿った河合も案の定肩を揺らすに至っていて面白い。噴き出しそうになった。
「このにまにま星人が絶世の美女だったら間違いなく俺はこいつを敵と見做して倒すね」
頬杖をついてその顔の行方を見守っていると、やがてにまにま星人から震える手がそろりそろりと伸びてきた。
「?」
頬杖を緩める。と、星人の細い指は俺の手を目指しているようで、従って手を任せる。
ぎゅ、と両手に包まれる自分の右手。
「た、かあき」
「ん?」
「私、貴章と阿部ちゃんのこと、本当に、ほんっとーーに嬉しくて嬉しくて。空の植木鉢に水あげてはっとするくらい嬉しくて」
「何やってんの」
「万が一、貴章が阿部ちゃんのこと大事にしなかったらどうやって貴章を地獄に送ろうかまだ思いつかないくらい嬉しくて」
「命かけて大事にするから考えなくていいよ」
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