第14話

会社、行かなきゃ…。




声に出して言おうとしたけど頭が掠れた為、唇を結んで心の中で。




ふら、と立ち上がった時、朝まであんなに注がれた一佳の熱が跡形もなく消されていることに気が付いて、指先は震えた。









いつもは喧嘩をする。



昨日は喧嘩もなかった。




喧嘩をして仲直りの方法があるのに、喧嘩もさせてもらえないんじゃ仲直りは、どうなるのだろう。




……怖い。




元々、私が先に好きになった一佳だから。


私が彼に棄てられてしまうことは全然在り得て。


私は何か一佳に見合うものをたくさん持っているとか、そういうことがないから……何も言わない一佳に正直腹が立つ。けど、私にできないことだったのかもしれない。彼の、隠していることが。



そ、うだった。



そう。




私は。










――その後、ゴミ箱に捨てられた、昨日私が着替える前に着ていたワイシャツを見つけた。




膝をついて、それを拾って。








「嫌いになったなら、言ってくれればいいのに」








そう、出ない声で囁いて微笑って、それをゴミ箱の中にふわりと放った。

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