第11話
「――――……」
声が
でない。
夜通し、その夜が明けるまで泣いた。
正確には泣かされていた。
重い瞼を持ち上げれば、僅かに開けられたカーテンの隙間から紫の春が見え、涙の痕に沁み。
拭おうと持ち上げた腕は私の感情と関係なく震えて。
唇をはくはくと動かすのを止めて、ぼんやりとそれを追って頭を擡(もた)げる。
声は失くしていて、身体が、腰辺りの気怠さが酷い。
一佳の姿はない。
いち、か。
ベッドに頭を戻しても、声は掠れてでなかった。
いちか、いちか。
手首が視界に入る。縛られたような痕を擦ってみる。その痛さに、一度も重ならなかった唇。
いたかった。
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