第10話

「…………ッ……」





赤、滲む、目元で一佳を見上げて声にならない吐息を零す。冷たい一佳は私に、痛みと熱、それから蕩けるような甘さを与えて綺麗な口元に笑みを浮かべ待った。




冷たい眸。




心の中でこんなことは嫌だと思いながらも彼には伝わってしまっている反応を恐る恐る、顔を背けて吐息混じりに口にする。






「……ぃちか、」



気持ちいいと、無理矢理感じたことを言わされて死にそうなくらい恥ずかしい、喉の奥から焼けるくらい恥ずかしい想いを必死に隠すタメに最後に名前を呼んだ。



彼はそれには何も返さず、……何かに、怒っているのだろうかと思った瞬間、身体を起こしたことで抜かれる長い指。



小さな声と共に脚は震えて、堪らず真っ赤になっているであろう顔を隠した。






「顔。…ま、いいけど…その内隠せなくなって泣き出すし」





髪を掻き上げた彼はそう呟きながら一連の動作でスーツのベルトに手を掛ける。



は…と零れる一佳の吐息は吐かれた瞬間のみ熱っぽく、やがて冷たい空気に溶け込んでゆく。気が付いた時には咥えていた開封前の避妊具を開け、私を見ずに「……今日は優しくしないから」とだけ囁く一佳の冷酷な姿が在った。

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