第6話

「一佳……っ」



嫌、嫌、と繰り返し首を横に振って拒む。



けど一佳は私の手首を強く掴んでシーツに跡を残しただけ。





「…タイ必要?」




ふと動きを止めて冷たく見下ろされ、問い掛けられる。何のことを言っているのか理解することができず、ただただその目を見た。




「手。縛りそうだから早々棄てたんだけど使う?」




「使、う…?縛、るって何で」





「……それ聞く?」





初めて、表情を歪ませて。捲り上げたパーカの下、手を避けた胸に歯を立てた彼は、熱を含んだ吐息にどこかわざとと思わせるリップノイズを乗せる。





「痛……っい、いたい、一佳」





押さえられていない方の右手で思わず一佳の髪を押さえるも、一佳は、構わず私に歯を立てて鈍痛を刻んだ。



ガリ、と皮膚の削られるような感覚の後、熱い舌が同じ箇所にゆっくりと這わせられて声が漏れる。





じわりと。





広がる熱は、毒のようで。






「や、っ……」

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