第5話

「…嘘だったら今日寝かせないから」





「は!?」




何を言っているのだと流石に真っ赤になって頭を起こす。一佳はそれを気にも留めず、するりと手を滑らせた。



「ゃ、……あっ」




肌蹴たシャツから薄く筋肉のついた滑らかな肌が覗いて思わず息を止める。「誘って声出てる。嘘吐き」と声が降ってきて、真っ赤な顔のまま目を見開いた。




彼に嘘が、全く通用しない。




それでも今日は、今は、待ってと括れを這う彼の手を押さえたくて必死に抵抗の意を示して逃げようとしても、一佳はそれさえ許してくれない。



怖いと。



本能に今までの経験が加わってそう言っている。今の彼に、普段の甘さは嘘みたいに無い。けれど何かがおかしくてこんなに冷たいと気付き始めた時にはもう遅かった。





冷たい指が、私の熱を奪っていく。

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