第4話

低い声が鼓膜を侵す。何も返せなくなってくることをわかっていて問うてくる。




でも、今日は。




一佳の雰囲気が、いつもと違、う――…?





「何?」




耳元で囁かれ、視界には片手で自らYシャツのボタンを外していく一佳の指先が映り、微かに瞼が震える。



咄嗟に私は、女の子の日だと、嘘を。




「……」



一旦距離をとる彼に、正直…安堵した。



澄んだ顔をして視線の先を捕らえようとする一佳の目の前で、この安堵を汲み取られないように顔に出さないように頬に力を込める。






すると黙った彼は、パーカの裾に冷たい指先を滑り込ませて。






びく、と跳ねる腰にキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る