第3話

「聞こえてる?」




その時ふわりと微かなお酒の香りが漂った。




けれどきっと、彼は酔っているわけではない。




「う、ん」




「本当?」



近付いた彼の髪が私に陰り、判った時にはもう遅かった。目の奥の色が、酷く冷たい。






「今日、しようね」








「へ、え……っや、今日?」




直感的に横に振ろうとした首を無視して伸びてきた冷たい指先が、私の首筋を這った。




「っ」



無抵抗なる音がしてすぐ彼の手は私の耳上の髪を掻き上げ、冷静にみえる意地の悪い唇はこの耳に寄せられる。






「そう、今日」

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