第2話

彼は、私を放った後追い打ちを掛けるようにスプリングを軋ませた。



それだけで無条件に体温は、一度、急上昇。





その後平然と跨った彼はまだ何も発していなくて、数秒私をじっと見下ろしたかと思えば左手首から腕時計を外し始めた。




私の視線の先。そこには、ネクタイの退いた佳麗な首が覗いていて。




くらくら、してしまう。






「何で俺のスウェット履いてるの」




こちらを見ずに問われて、思わず上擦る声。



一佳の部屋着を借りたことに特別な理由はなくて、単にお風呂から上がったあと着替えを忘れたことに気付いただけで。今までにも何度もあったことだ。



わざわざ聞くことの方が珍しい。




「しかも短い丈の方。寒くないの」





ただ、伏せ目がちな彼から目が離せなかった。





ぼうっとする眸に映る、腕時計を宮棚に置いた一佳は答えを待たずに口元を緩め、額を寄せる。

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