第4話
― 阿部緩菜Presents ―
『――あ、でもそれしか替えないんだった。パジャマ』
小さく小さくなったニットを受け取りながら言った相良さんに『!!!』と再び飛び上って胃が痛む。
『い、今すぐ買っ『いいから。今日の阿部の仕事は俺と一日いちゃいちゃすることだから』
『!?』
彼は私を見てはにかみ、大丈夫だと言って手を引き、自室のクローゼットを開けてしゃがみ込んで、一枚の大きなニットを取り出した。
それは、マスタード色のニット。
『これ何だっけなー。確か大学ん時誰かが海外旅行の土産に送ってきたんだけど、どう見たって外人サンサイズだろって思わねぇ?』
な、と言ってそれを手にする。
相良さんは小さくなったニットも、今日はいい秋晴れだから干そうかと言って笑った。
やさしいやさしい相良さん。
私は、貴方を困らせてばかりいないか、心配です。
それから数日後。
挽回を考えていた私は、或る日相良さんが『観たいなー』と呟いていた映画のチケットを取って、今度のお休みの日に突然お誘いしようと目論んでいた。
ご飯の場所も、勝手ながら探して予約した。
私は相良さんが笑ってくれるのを、当たり前だとは思っちゃいけない。
週末。
相良さんから来たメールに、休日出張の文字が並んだ。
それを目にして力の抜けた指先で、いってらっしゃいと、頑張ってくださいと、ご飯作って待って…と打つ。
言う前で、よかった。
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