Mustard*Knit

第3話

― 相良貴章Presents ―





日曜日の朝。


目覚ましをかけないでいて許される日。



手を隣で弾ませて薄らと瞼を持ち上げて、隣に居たはずの阿部がいないことに気が付いて起きる。



「…何時…」



呟くと丁度洗面所の方で洗濯機が洗濯を終了した音が聞こえたので身体を起こした。




欠伸をしながら進んだ廊下の途中、明かりの漏れる洗面所を覗くと洗濯機の前に立つ阿部の後ろ姿が見えて立ち止まる。


捲っていたパジャマの裾を戻して。



「…あべ?」




声を掛けた途端、思い切り肩を跳ねらせる阿部は恐る恐るこちらに振り返った。


顔が真っ青だ。



で、手には何かを持っている。




「に、にっ、せんたくき…っ」




「ぶ」




爆笑だった。



彼女の手には、俺の小さく小さくなったニット。というかパジャマとして使ってたやつ。



見た限り、うっかり洗われてしまったようだ。




「ほ、本当にごめんなさ…「いーよ」



思い切り笑った後で小さな笑みを残したまま、彼女に寄り添う。


「そんなことより、飯作ろっか」



腕の中にすっぽり収まる阿部が、心底愛おしい。




寝ても覚めてもいとおしい。

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