第18話
「?」
私は顔を上げて彼女を目に映した。
「驚いて困って、どうしようって、どうすればいいのか分からなくて。それでも嬉しいとは思わなかった?」
嬉しい?
不思議に眉を顰める私の前で、彼女は問いの形を変える。私は頭の中で、ひたすら自分に問いかけていた。好きとか嫌いでなくて、嬉しかったかどうか。
「それとももう会わなくてもいいやって思ってたとか?」
会わなくてもいい?
私は反射的に首を横に振った。
そんなこと。
思ったことなんて一度も。
今でも、会いたい。
「河合ちゃん!」
何かを思ったのか宇乃さんは急に勢いよくデスクに手の平を打ち付けた。
その音と声が予想外にも大きかったのでオフィスに残っている何人かがこちらに振り返った。しかし宇乃さんは気にせず唖然とする私に立つよう促す。
「今日、いつも河合ちゃんが乗ってる路線の終電早まるって言ってたよね」
そう言いながら「マグとかパソコンとか、後処理は私に任せて」と付け足し、
「行っておいで!」
と笑った。
そっか。
会いたいって気持ちだけで、
嬉しいって気持ちだけで、
好きですに繋がる。
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