第14話 見つめる
気になると自然と目がいってしまう。
それは、アンドロイドも同じだ。
スミレは、クリナムを見ていた。
シオンをどのように見ているかだ。
確かにシオンは、美しい。
人間ではない美しさとでも言うのだろうか。
例えれば、彫刻のような。
ピエタ像のような……
そう、十字架から降ろされたキリストを抱くマリア。
ちょっとした仕草や声がきれい。
相手を思う心も持っている。
これは、シオンのマスターであるイーグレットの好みなのだろうか。
アンドロイドの容姿は、マスターの好みが強く現れるからだ。
イーグレットは、どんな人物だったのだろう。
裕福な知性溢れる人物だったのではと思った。
なんせ上品なのだ。
私のマスターは、どうしているのだろうかと、クリナムに目を向けた。
やはり、シオンを見ている。
悲しい事に、男は目の行くところ決まっている。
なぜ?
なぜ、見てしまうのだろうかと。
階段を上がるミニスカートとか、
Vネックのセーターで、前かがみになるとか、
多くの男性は見ている。
または、気にならないフリをしている。
スミレは、考えていた。
シオンが言っていた”私たちの手の届かない世界”なのかもしれない。
細胞が欲しているのかもしれないと。
奪い合って生き残ってきた人間だからかもしれない。
人の所有しているモノが欲しい。
そんな欲求が頭の何処かに潜んでいて、何かのキッカケで何らかの行動を起こすのかもしれない。
ん。
でも、シオンは、アンドロイドだ。
私と同じ機械。
私もクリナムに愛されている。
生物と関係ないのか?
容姿なのだろうか。
見つめていると、欲望が生まれてくるのか。
クリナムに何かが、起こっているのだろうか。
スミレは、わからなくなってきた。
クリナムをじっと見つめる。
シオンを見つめるクリナムを見つめる。
「なあに?」
クリナムが、スミレの視線に気付いた。
「なにも……」
スミレは、顔を左右に振った。
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