第11話 モンガータ(Mangata)
イーグレットは、仕事をシオンに任せて休憩を取っていた。
この時間、風景が好きだ。
甲板の様なバルコニーの端から椅子を引きずって、お気に入りの位置に置く。
刺すような痛みがイーグレットの動きを止める。
胸に手を当てながら、ゆっくりと息を吐く。
この病気になって、息を吐かなければ、吸うことが出来ないと知った。
椅子に深く腰を下ろし、呼吸を整える。
胸の痛みを眠りにつける様にと。
「身体を冷やさないで」とシオンの声が聞こえる。
「あぁ」イーグレットは、曖昧な返事を返した。
イーグレットは、この風景に入り込んで行く。
空に張り付いていた白い月が色を帯びて、
水平線に浮かぶ月の明かりが海に反射して、光の道をつくる
Mangata
モンガータ
遥か地平線の向こうに続く道、
いずれは、この道を渡るのかと思っていた。
この道は、未来へと過去へ、どちらにも行けるのか。
今は、未来と過去の狭間に居る。
私は何処へ行こうとしているのか?
お前は何処へ行こうとしているのか?
自問する。
答えはと、
頭の中を探し回るが、
頭の中は、真っ白で空になっていて、
自分で何の事を訊いているのか、
わからなくなってしまった。
空っぽの頭で、ただ海を見つめる
「もう、いいかな……」
自分の呟きが聞こえた。
その時、あなたは忘れ物をしていると身体の何かが教えてくれた。
「シオンをどうするの?」と。
そうだ、シオンに何て言おうか?
それだけが、気がかりだ
ずーっと傍に居てくれたシオン。
愛しているよ、シオン……
何て言おうか?
何て……
シオンに……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます