第10話 砂浜の二人を見つめて
シオンは、甲板の様なバルコニーに居た。
ここからは、空と海が見えし、灯台の下にある小さな砂浜も見える場所。
嫉妬……。
なぜ、言ってしまったのだろう……
スミレが私に嫉妬しているなんて。
私の方が嫉妬していたのかもしれない。
仲のいい二人に嫉妬していたのかも。
クリナムは、あなたに似てる。
最後の仕事に灯台守を選んだことも。
クリナムにあなたを見たのかもしれない。
そして、スミレが嫉妬するような仕草や言葉をクリナムにかけたかもしれない。
まだ、私は、あなたを追いかけている。
イーグレット、訊いてる?
シオンは、じっと地平線を見つめる。
もう、日が暮れかかっていた。
ふと、砂浜に目を向けるとクリナムとスミレの二人を見つけた。
スミレが、はしゃいでいるようだ。
シオンは影を引き連れる二人を見つめる。
しばらくして、シオンは、また海を見つめていた。
イーグレットは、この時間の風景が好きだった。
ずーっと、この風景を眺めていた。
あなたは、何を考えていたの。
シオンは、その頃の記憶の中に沈んで行く。
私たちも
あんな風に砂浜を駆けたものね
ねぇ、イーグレット。
聞こえたのは
波の音
風の音
海鳥の声
そして、あなたの声
私を残して逝ってしまった
それは、仕方がないこと
仕方がないこととわかっている
頭の中では
今でも想うの
遥か地平線に沈む夕日を見ていると
そっと、背中から抱いてくれて
「きれいだね」って
一緒に夕日を見つめていた
その時間が恋しい
あなたが居なくなって想う
あの時間は、何だったのだろうって
幻を見ていたのだろうかと
シオンは、目から何か出て、頬をつたった。
クリナムとスミレの二人が帰って来たようだ。
スミレの楽しそうな声が聞こえた。
シオンは、頬をぬぐうとバルコニーから部屋と戻っていった。
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