第18話
一応同じ部署ではあるけれど、割と外回りが多い彼を給湯室に残してオフィスに戻る。
すると出て行った数分の間も惜しむようにパソコンと向き合い続けている櫻井さんの背が見えた。
なるべく音を立てないようにして、湯気の上がるコーヒーをデスク脇へ。
「ありがとう」
それでもやはり気付かれてしまった後、櫻井さんは椅子を軋ませてマグを受け取った。
「お疲れ様です」
「あかちゃんもね。もう帰った方がいいよ」
変わらず直らないというか直してくれないというか、この恥ずかしいあだ名は入社当時から変わらない。
「はい。これ飲んだら」
私は笑って、自分の机に置いたばかりのマグを手に取った。
「ん」
そう応えて再びパソコンと向き合う櫻井さん。
10分ほどの時間が経過して、私は席を立った。
“お疲れ様です”を言いかけて、やめる。
邪魔しないようにしよう。
そうしてオフィスをこっそり抜けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます