4月2日(月)

新入社員、上司とコーヒー

第12話

「お早うございます」



「お早う」


「お早うございます」




所属する商品企画部のオフィス内。スプリングコートを軽く折り畳んで席に着き、早速パソコンを起動させていると、背中合わせの席に座る櫻井さんの声が飛んできた。




「あかちゃん、今日朝から会議だから」




櫻井さんはさらりと、いつか名付けられたおかしな渾名で私を呼ぶ。一応本名の灯からきている渾名だ。



「そうでしたっけ」


「ん。さっき急に云われたけど、昨日から4月で新入社員が入ってきたから、その紹介メインにやるらしいよ」



そうか。



思えば私も去年の今頃、緊張で破裂しそうな心臓をワイシャツの下に抱えてここに足を踏み入れたんだ。




「あれからもう一年ですか。信じ難いですね」



そう溜息を吐くのは、私の向かいの席の河合ちゃん。


彼女は同期だけど年は一個下。



「ね、早いねー」



相槌を打っているうちに通りかかった上司が、櫻井さんに「会議始めるぞー」と声を掛けたらしい。


彼に促された私たちも続いて席を立った。




開いたばかりのパソコンは再び閉じられ、会議室への足取りを見送ることになる。

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