第10話

「テレビ観ますか?」



「あ、気遣わないでください。…菜の花の、初めて食べましたがすごく美味しいですね!」



リモコンに手を伸ばしかけたのと入れ違いに、チャーハンを口いっぱいに頬張った花吹さんを見てふと力が緩む。



「!」


彼が驚いた表情をしたあと笑んだことで、自分が無意識のうちに嬉しくて笑ってしまったことに気が付いた。




「ありがとうございます」



「こちらこそ」




「花吹さんって初一人暮らしですか?」



質問を投げかけてから、チャーハンを口に運ぶ。



「はい。そう見えます?」



花吹さんはチャーハンを飲み込んでから答えた。



「んー」



じっと見つめると、心なしか彼の額が近付く。牧場で暮らす動物みたいな、短く可愛らしい睫毛を見つつ「そんな感じします」と答えた。



「うわー何か恥ずかしい。でもそうですよね。今のところ僕、社会人らしい要素なにも見せられてない――」



スプーンを持ったまま手を口元に持ってきて、感情を声にする彼はまるで学生のよう。




「あの、もしかして学生さんだったりしますか」



彼はゆらりと瞳を上げる。



「…そう見えます?」



再びいたずらに返す彼に、これははいと言っていいのか、頭の中を巡る判断。



「少、し」



その結果、曖昧に。





「1ヶ月前は学生でした」

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