第5話

数分後、お隣さんの呼び出し鈴を押していた。




そのまま壁の穴からこんにちはのパターンも考えたけれど初対面だしこれからお隣さん(仮)だし、ちゃんと玄関を通そうという結論に至った。



どうしたのか話を聞こう。


ええ?お隣さんよ。よくも壁をぶち破ってくれたな、と。



すっかり起きてきた頭にオラオラ系な自分が加わって、腕を組む。




返ってこない反応。勢い任せに二回目のチャイムを鳴らすと割と早くガチャ、という音が聞こえた。




『はい』




思っていたより低くない男声を耳にして、管理人さんの言っていた印象がラ○ウの印象に勝ってくる。




「708号室の宇乃と申します」



『……っあ、どうぞ中に入ってください』




そう言いきって、プツ、と切れる音がした。




え、入る?



入れと?



一人暮らしなのかどうかは知らないけれどそんな簡単に入っていいものなのかな。



しかも初対面の男の人なのに。




一瞬沈黙を作った後、取り敢えず私はドアノブに手をかける。



恐る恐る玄関にお邪魔させてもらったはいいものの当人の姿はなく、代わりに玄関から段ボールが点々と置かれた空間があった。



やはり、越してきたもよう。




「あの」




「い、ま行きます」



光の漏れる洗面所から、慌てた様子の声がする。



と、すぐにその洗面所から、タオルを頭に羽織ったままの男の人が姿を現した。




「すみませんこんな格好で」

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