第7話 地下鉄駅から外へ
響介と絢音は、地下鉄の階段を駆け足で上がり、扉を開けた。
眩しい光で、目が痛い。
先に行った真琴が背を向けいた。
響介と絢音は、真琴の横に立ち、真琴の目線を追った。
「すげぇー」
響介が思わず声を上げる。そこには、広大な世界が広がっていた。
見渡す限り豊な森林が広がっていた。
その森林の中央にとても大きな樹があった。
多分、街で見る高層ビルより遥かに大きいだろう。
その向こうにいくつかの塔らしきものが見えた。
塔らしきものは、草原に点在するアリ塚を思わせた。
頭頂部が崩れているものや主を失い崩れ去ってしまったように見えた。
白と銀色の二対の塔がいくつか見えた。
それらは、廃墟のようで生気が感じられず、根本は何も無かったように植物で覆い隠されていた。
その中に真新しい白い塔があり、塔自体が発光しているかのように明るく浮き上がっていた。
その塔の横に銀色の低い塔が並んでいる。
「あれだな」
真琴が指さした。二人はうなずいた。
「行こう」
最初に踏み出したのは、絢音だった。響介と真琴が後に続いた。
三人は小高い丘を下り、森の中の一本道を進んで行った。
この世界のものたちが、侵入者に気付き始めた。
地面の下では、植物の根、昆虫、小動物が気付いていた。
何だ、重みが移動している……
踏まれているのか?……
リズミカルな圧迫感だ……
二足歩行らしい……
一人……、二人、……三人
知らせなくては……
何か来たぞ
いいヤツか?
悪いヤツか?
王様に伝えなくては……
植物の絡まった根や枝葉が、放射状に次から次へと情報を伝えていった。
あの大きな樹まで、瞬時に伝わっていった。
チチチチチィ。
小鳥が、騒ぎ始める。
小鳥たちが飛び回り、高い枝にとまり三人の方に横顔を向ける。
目が横についているからだ。
そして、獣たちに気付かれ、他の見知らぬ者も気付くだろう。
「鳥の言葉があるの。今のは警戒音」
絢音は、樹の上の小鳥たちを指さした。
ジィー、ジィー、ジィー。
更に、騒がしくなる。
「何もしないよ」と響介は小鳥たちに話しかける。
絢音と真琴が、そんな響介を見て笑う。
小鳥たちは、枯葉のように幹にそって根本へと降りていく。
カモフラージュなのか、誰から教わったのだろうと不思議な気持ちになる。
「カラスだ」響介が呟く。
二人は耳を澄ます。確かに遠くでカラスの声が聞こえる。
カラスは、声を掛け合っている。
カーカーという声に、カーカーと答える。
個性的な声で個体を識別しているようだし、複数で行動する賢い動物だ。
「カー、カー」
響介が、口に手を添えて、カラス声真似をした。
その声は、驚くくらい森に響き渡った。
森での音は信じられないくらい伝わる。
コンクリートの硬い壁がないせいだろうか、遠くの話声も近くで聞こえることがある。
響介の真似した鳴き声は、カラスに届いていた。
誰だ?という様にカラスもそれに返答した。
「通じたの?」真琴は、驚いた。
「やめなよ、来るわよ」絢音が空を見上げる。
「見えた。ああ、あそこ……、一、ニ、三羽だね。カラス」
真琴は、ずーっと遠くを見つめながら答えた。
カー、カー、カー。
カラスたちの声が聞こえ近づいてくる。
三人は、草むらに身を隠した。
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