子供の情景

第1話

　　子供の情景

いつか笹舟を作った

川沿いの散歩道

今日もジョギングの途中

幼い姉妹とすれ違った

小さい妹と

手をつなぐため

しっかり者の姉は

自分の右手をさしのべる

さし出された右手を

妹は何を思ったか

こちらも右手で

握り返そうとした

あらあら手が逆だよ

それじゃ歩きづらいよ

私は微笑ましく

その様子を見ていた

すると姉はさりげなく

くるりと身をひるがえして

妹の右手を

自分の左手に持ちかえた

姉妹は仲良く歩いて行く

川沿いの道を楽しそうに

たったそれだけの光景に

私はなんだか胸を打たれた

すべてのやさしさの原点を

そこに見た気がしたからだ

姉妹の背中から

しばらく目が離せなかった

遊歩道の先ではお母さんが

「早くしなさい。夕飯に遅れますよ」

と　何も知らずに

幼い姉妹を急き立てる

大丈夫ですよ

お母さん

あなたのお子さんたちは

きっといい子に育ちます

だって　ほら

いまも私の疲れを

雨上がりの虹のように

吹き飛ばしてくれました

　　　　　　　　　　　　（了）