第12話 次は絶対

 病室の前ではサイゾウがソファに座っていた。俺たちはその隣に静かに腰掛ける。


「サイハさん、命の危険はないみたいでよかったっすね」


「消火隊には、サイゾウさんが連絡したんですか? 」


「ええ。気になって祖父の家を眺めていたら、煙が見えたのですぐに」


「早く連絡してくれたおかげで、盗賊も捕まえられたし、よかったですね」


「祖父の家には2人、若者がいたみたいなんですが、あなた達ですか? 」


「ええ。忘れ物を取りに。怖くて逃げ回っていたら、偶然木に火がついて驚きましたよ。結果助かりました」


 本当はいなかったことにしたいけど、強盗の証言でサイゾウにはバレそうだし。このくらいの嘘はいいよな。


「そうでしたか。ありがとうございました」


「お礼を言われるようなことはしてません。では、俺達はこれで」


 頭を下げて、席を立った。

 病室をチラリと覗くと、身体を覆う光が煌々と見えた。


 命に別条はないって言ってたし、まだ、大丈夫かな。

 本当は取って帰りたいところだけど、意識のない状態じゃ、たぶんタカノ取らないだろうしな。ここで押し問答して変に目立つわけにもいかない。

 後ろ髪を引かれつつ、病院を後にした。


◇◇◇

 帰り道、俺ははタカノの頭をガシッと掴んだ。

 そう。まだ説教が終わってない。


「言っておくが、今回のはアウトだからな」


「何がっすか?! 」


 タカノは痛みに顔を歪ませてジタバタしている。


「足を引っかけるのは、自分の足じゃなくてもできるだろ。俺、触れるなって散々いったよな?あと、刀をぶん投げるのは偶然じゃない」


「それなら、コウ兄が刀を打ったのだって……」


「俺は偶然素振りしてたんだよ。口答えするな! 」


 自分のことは棚に上げ、そのままクドクドとお説教を続ける。

 タカノは納得いかない、と口を尖らせたまま聞いていた。まったく、ちゃんと反省したのか?


「でも、まぁお前にしちゃ頑張ったな。明日……いや、もう今日か。次病室行ったときは絶対『職人魂』取れよ」


 タカノは満面の笑みで頷いた。

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2024年11月17日 15:00

異世界ツアーは命がけ? ノノ @nono8

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