第5話 万魔佞狗《まんまでいく》
「しゃ、しゃべった? 嘘だ……そう言えばちょっと暖かい人形だ」
彼が腕に抱えているカワウソ人形は、カワウソに白い
「坂の上のアパートに住んでる
人形は自分のことをオリジナルだと自己紹介した。そして
「ひょっとして、
「何とか出来そうな場合と、そうでない場合があってな。とにかく、何がどうなっているのか話してみるのだ。私のことはイクちゃんとでも呼んで欲しい」
「そ、それじゃあ……俺は会社ではアミーって呼ばれてます」
彼から見ると、イクちゃんは身長80センチ程度の、ほぼカワウソ的な外観で胴が長い不思議な生き物にしか見えない。
やたらシュールな状況ではあるものの、どうにかこうにか
「状況は理解した。アミーはあのスコーンを食べた
「イクちゃん! 使えるとかじゃないから! このままだと俺、死んじゃうから! 予備の魂とか無いから!」
イクちゃんこと
「あの呪いの具入りスコーンはな、誰かが作ってここに置いた物なのだ。面白い効果なので、他の人間にも食べさせてみよう。見たところ
イクちゃんの説明によると、この具入りスコーンは中のミートボールが中心からズレている分だけ、食べた人間に対して酷い効果を与えるというものであるらしい。そして効果が酷い分だけ、周辺には福を与えるようなのだ。
更にど真ん中に具が入っているスコーンだけは、
「そう言えば、俺が食べたヤツは端の方からミートボールが見えてたな。大外れの大凶だったんだ……しかも丸分かりだった」
しょげ返るアミーだったが、そんな彼の肩をイクちゃんはポムポム叩いて
「こういうのにはルールがあってな。この木の皿に乗っている分を全部食うと絶対に1個は当たりなのだ。この際だから、重複効果の有無も含めて確認してみるのはどうであろうか?」
イクちゃんからは割とかわいい感じに聞かれて、アミーはもう少しで1個目に手を伸ばしかけたが、寸前で思い留まることに成功した。多分だが6ゾロとかではないだろうか。
「イクちゃん。俺が食べる合計って、最悪は外れ10個で当たり1個だよね。もう既に1個は食べてるから。その場合は良くて効果相殺で、悪くすると被害の間隔が縮まって、程度の方は大きくなるだけだよね?」
アミーとしては聞いたことをそのまま復唱する感じだった。彼は不思議な気がした。
「そうだな。そういう効果になる可能性もあるぞ。その時には、女性になったり別の生き物になれば回避可能だ! 性転換と種の変更は任せてもらいたいのだ。実績がある」
「イクちゃん、俺がお願いしてるのはそういうことじゃ無いよ! これを作った人を探して、どうにか出来ないか聞くとかじゃダメかな? 普通はそこからだよね!?」
普通の人間に出来ないことが出来るということは、普通の人が望まない解決策が出てくる事でもあるのだと、アミーはイクちゃんと出会って初めて理解した。
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