第19話 カエデ&エルフ

 ……扉を開けると、謎ポーズのエルフが居た件。


 多分"あはん"とか"うふん"とか言ってる感じからするに、割と真面目にやってるみたいだ。

 だがどう見ても、僕からすると謎ポーズで踊ってる変人でしかないのだけれどね?


「OK、何も見ていなかった。 そう言う事で行く───」


「突っ込めよぉ!! そのポーズ何ですか?とかさァ!」


 ……なるほど。

 どうやらとてもご立腹のようだ。

 だがまぁ、一つだけこちらにも言い訳の余地があるのでね。


「……の謎ポーズの変人に、ごめんだけど何を話せと?」


「素っ裸、だからなんだぁぁ!!コッチは研究ばっかりで休む暇なくてよ!?風呂に2週間は入ってねぇけどよぉ!?見たけりゃ好きにしろよぉぉぉお!!?」


 めっちゃ金切り声で、エルフがブチ切れてきた。


 というか、確かに少し臭う。


「……まぁ煩いし、さっさと処理するか。 カースド・ライトニ……」


 手の中にいつも通りの雷を作り出そうと魔力を練り始めた僕を見て、エルフは躊躇うことなく土下座をした。


「……プライドとか、エルフはすっごく高いって聞いてたんだけどさ?その話嘘だったのかな」


「ヘヘヘヘ、ほかのエルフならそうかもしれませんが、私は生憎プライドなんて服と一緒に投げ捨ててまいりましたもので」


 そう言いながら、エルフは地面を舌で舐め始めた。

 最初に言っておくか、別に僕は何もやってなど居ない。服従の呪いをかけたとか、隷属の呪いをかけたとか、痴女になる魔法を使ったとかじゃないぞ?


 目の前のエルフは勝手に、何故か土下座してるし、何故か裸だし何故か、地面を舐めている。


 ……本当になんで?


「一旦話を聞こうかな? あまりにも疑問が多すぎて、僕一人じゃどうしようもなさそうなんでね。 だから地面を舐めるのをやめなさい!」


「ふへ?あ、地面は美味しいですよ?塩っけがあって、少しだけ幼い頃の親に殴られて地面を這いつくばっていた頃の懐かしい記憶を思い出せますし」


 それは果たして思い出すべきことか?

 とも思ったが、言わないことにした。

 僕は優しいからね。


 _________________________


「はい、私の名前はロレーヌと言います。気軽にロレちゃんとお呼びください。 見てわかる通りダークエルフで年はピッチピチの425歳です☆ 」


 助けたエルフはどうやらダークエルフだったようだ。

 ちなみにダークエルフとは、黒いエルフ族という訳ではなく、闇の魔法を使えるエルフって意味だ。


 なので見た目はほぼ普通のエルフであるのだ。


 というか425歳でピッチピチは無いだろう。それはもうおばさ────、


「エルフ族の400歳代は人で言う20歳前後ですよ?」


 ……つまり21歳そこそこか。


 ロレーヌは胸を張りながらそんなことを言っていた。

 そしてここまで会話を何度か交わす度に確信していることがある。

 デカイ。……じゃなかった、この女、アホだ。


 デカイに関しては、その……まぁ、エルフ族ってのは胸が小さいヤツらばかりなのに……その、まぁね?

 一目見ただけでUDKうおっデッカってなるレベルなので、話しながらわざと目をそらさないとやってられなかった程だ。


『あら、私の貴方。 駄肉が多い方が好みなのかしら?』


 この話はやめよう。

 グリムの底知れない怒りを受けて、肌がちりちりと灼ける匂いがしたのでね。


 ……話を戻すと、彼女はアホの子だ。

 まぁ話が成り立たない程のアホじゃないのは助かるのだけれど。

 でも研究者がアホの子でいいのかな……。


「?私の顔になにか付いています?」


 若干自分の唾液が付着して、べとべとになった顔でロレーヌは不思議そうに首を傾げていた。


 まぁいいや。

 早いところ目的を済まさなきゃなのだからね。


「君はちなみにここがどこなのかとか、教えてくれたりしないかな?」


「えっとここはE&D第一研究所、ですね。 ちなみにE&Dはエルフとドワーフの略です。 ちなみに私は副所長ですよえへん!」


 ロレーヌはペラペラと話をしてくれる。


 そうして、僕は一旦自分が何をしたのかを理解する運びになったのであった。


 _________________________


【ユークリプス滅亡まで後3時間】

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