第18話 カエデと研究所
僕は置いてあった資料を机に置き直し、それから静かに目を伏せる。
少なくともここに書かれていた事は事実であり、実際勇者魔法は危険だと女神から何度も言われ続けた僕があったのだから、間違いは無い。
しかしそうなると───。ぅぅん、頑張って解析しようとしたここの人達は愚か過ぎると思うのだが?
まぁいいか。
別に僕が何かしら考えて心配してやる必要も特段ないわけなのだからね。
「ここは誰かの工房って所かな? さっきのヤツらを見るにエルフとドワーフのって事だよな」
『そうみたいですね』
耳元から相も変わらずリティアの声が聞こえる。
僕は少しくすぐったい気持ちを我慢しながら、辺りを散策する事にした。
しかしある程度探してみたのだが、特になにかある訳では無かったし、なんなら誰も来ないことから多分ここはそこまで重要な場所じゃないという事ぐらいしか分からなかった。
「まぁいいや。 早いとこ馬鹿魔法使いを探さなきゃだしなぁ。 ……ん?」
適当に炎を出していた所、焼けたカーペットに隠されたなにかの扉を僕は見つけた。
「ふむふむ。 こういう隠し扉ってワクワクするよね」
そんなことを言いながら地面を踏み抜く僕。
扉は案外分厚かったらしく、一度では完全に破壊することは出来なかった。
仕方ないので僕は───、
「カースドライトニング・セクエンタス!!」
ちょこっとだけ上位の魔法をぶち込んでみたのだけれど……。
……やりすぎてしまったみたいだ。
手から放たれた超出力の雷により、扉ごと後ろの階段の奥に雷が進んで行ってしまったのだ。
「グワーッ!」
奥の方から悲鳴が聞こえた。
「やべっ、誰かやっちまったか!」
『別にいいのでは?どうせここにいるヤツらなんてゴミカスばっかりでしょうし』
リティアはどうやら普通にグサグサということが趣味のようだ。
……というか若干グリムに引っ張られてない?気のせい?
『あら、私の貴方。 それは気のせいよ。 別に私は誰かと仲良くするつもりもないし、誰かに真似されるのも赦してなんか居ないわ』
『この口調は自前です!』
違ったらしい。
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僕はそう言いながら階段をゆっくりと降りていく。
若干暗かったので、光呪の魔法を使って呪いの光を振りまきながら階段を降りていく僕。
「!くそぅ!貴様何をぁぱばばばば!?」
研究服に身を包んだ奴らが、次々と呪いの光を浴びて死んでいく。
……というか結構人居たな?
じゃあさっきの騒ぎに気が付かないはずが無いんだけどなぁ?
僕は首を傾げながらも、前に進むために、足を踏みしめた。
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一人の研究服に身を包んだエルフが、叫び声を上げている。
「ば、馬鹿なぁ!族長が殺られたって言うのか!」
私は寝起きの頭に殴られたような衝撃を浴びせられた。
「族長は不死身だぞ!?どうやって殺すと言うのだ!バカを言うんじゃないぞ!」
せっかく仮眠を取っていた所だと言うのに、私の前には地獄のような情報が流れてきていた。
数分前、何者かが研究所に襲撃をかけてきた。
だが当初我らは族長が居るからとあまり気にすることなく、どうせすぐに終わらせれるだろうと考えていたのだが……。
その族長が二人、纏めて瞬殺させられたと言うのだ。
────有り得るかそんな事がッ!
ドワーフ族長は不死身レベルの頑丈さを、エルフ族長に至っては不老不死だぞ!?
それを殺せる!?
んなアホなぁ!!!
むしろ私が殺したいって何度も思ったのに!!?殺せないから諦めたって言うのに!!
私はガジガジと頭を掻き乱す。
……ってか、不味いなこりゃ。
今自分がいる場所と研究所は直通だ。
……族長を瞬殺した奴がこっちに来る……?
「────ふぅー。 OKわかった。 交渉してみる他ないよなぁ。 ……胸とかで釣れたり……しないかなぁ……」
私は諦めたように眼鏡をかけると、椅子に腰かけ、自分が生き延びるための策を考えることにした。
……こんな所で死んでたまるか。
私は魔族虐殺を生き延びたって言うのに、こんな所で死んでしまうなんてあってはならないのだから!
そういうと、かつてダークエルフと呼ばれた種族の生き残りは、震える手を握りしめた。
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【ユークリプス滅亡まで後4時間】
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最近忙しすぎて更新が少なくて申し訳ねぇです。
繁忙期死すべし。
まぁそれはともかく、もしよろしければ☆と♡などで応援していただけたら幸いです。
……この事を書くのも久しぶりな気がしますね。
今月末のカクヨムコンに向けていい作品を一つ作っていますので、もし良かったらご照査ください。
ちなみに異世界系(主人公は女性)です。
理由は男性にすると悲惨さが少なかったので、女性、しかも少女にしました☆
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