第17話 カエデは資料を見る
「んで、ここはどこよ……ってかリティアは何処に?」
僕の疑問はそこであった。
先程からリティアの姿がどこにも見当たらなくて、普通に首を傾げていたのだが。
『あ、私はここです!耳元耳元!』
突然耳元からリティアの声がした。
言われた通り、耳元を確認してみると、そこには結晶のようなエンブレムがくるくると回っていたのだった。
「これは……なんだ?」
最初自分のアイテム化と思ったのだけれど、そんな物を持っていた覚えが無いのである。
首を傾げると、リティアが再び話しかけてくれた。
『この結晶が私です! さっき『ケルヌンノス』を弄っていた時に気がついたのですが、どうやらこの姿になる事ができるみたいです。 ちなみに他にも人形のような形や、指輪───』
『それはダメね。 指輪、なんて。 もしその形を貴女が取りたいというのならば、私の敵。 確実にこの世から退場させてあげるわ、感謝なさい?』
『指輪はダメらしいので、耳飾りとかなら邪魔にならないんじゃないでしょうか! ……要はカエデ様の動きについて行くには、体が邪魔だったので……』
なるほどね。
言いたいことはある程度わかった。
確かに僕は彼女を蘇生したのだが、それは既に無かった肉体を擬似的に作り上げた形になるのだ。
呪詛とあの土地……つまりは魔族の里に込められた呪いを集めて、彼女の肉体を作っておいたのだが。
そしてそこに僕の魔力を混ぜて蘇らせたので、実質僕の身体の一部とも言えるって訳だね。
だから僕の耳につける耳飾りになってくれる、そういうことらしい。
「ありがとう。 確かに僕の旅路に人が居ると割と邪魔かもしれない。それに万が一もある。 そういう意味では確かにリティアの考えも間違いじゃないだろうね。 現にさっき空間ごと吹っ飛んだりした訳だし」
先程の事態のような事が起きると、面倒な事が増えてしまう。
それを避けるためにも彼女にはしばらく耳飾りの形を取ってもらうことになるだろう。
「……まぁひとまず────その話は一旦後でかな。 ここの研究所が果たして、何なのか。 それを確かめない事には……って感じだしね」
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【女神の魔法とそれらに関する資料】
女神様の魔法、それは確かに素晴らしいものだ。
人が手にできる力では無い、そして人が扱うことが出来ないほどの余りある破壊の力でもある。
そしてそれを制御するために、我々はこの装置を開発することにした
その資料は我がエルフ族の長がほぼ全て頭に入れている。
この保管の方法がもっとも安全だと、エルフ族の会議の中で出たからだ。
不老不死のエルフの族長を、データの保管場所として利用するのは天才の発想だと私も思う。
万が一、族長が殺されたり……まぁそんな事は起こりえないのだが。
……その場合は、滅亡待った無しなので、速やかに緊急事態としてボタンを押すように。
にしても、やはりドワーフと共同で開発するのはベストだと思う。
知力の我らと、力と技術のドワーフ。
ふふふ、我々が手を組んでいるのだから、女神の魔法などすぐに解析して人々の使えるものに変えてやる!
我々ならできる!現に勇者の魔法は粗方解析が終わったのだからな。
……
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【勇者の魔法に関する資料】
勇者の魔法は危険である。
使用する度に寿命と、魂をすり減らし、使う度に肉体に勇者の魔法が強制的に破壊してくる。
使用する度に自分も命がすり減ることを認識してしまっているほどだ。
……こんなものを人に使わせていた、その事実はなるべく隠蔽しなくては。
我々エルフですら、この有様なのだ。
現にマスターと呼ばれる魔法使いですら、勇者の魔法を使った途端数ヶ月眠り続けている。
市民に配っていた勇者魔法のレプリカも、少なからずこのような副作用がある事と考えた方がいい。
……こんな魔法を勇者は使っていたのか。
恐ろしいな。
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【ユークリプス滅亡まで後4時間】
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