第14話 カエデさんユークリプスにて
【カエデ視点】
「ほぉ。 それを僕に頼むとはふざけてんなぁお前」
『ああ、ふざけてるぜ。 だが真面目にふざけるのも私らしいだろう?』
「あのなぁ…………はぁ。 お前と話してると色々頭が痛くなるから、そうだな。 一旦話だけ聞いてやるから。 んでなんだって?エルフ?」
『イエス。 エルフ族って奴がなぁ私の生命維持装置をぶっ壊そうとしてるんだ☆ そしてその結果私ピーンチ。 助けてヘルプ☆』
猫なで声、猫なで声かなぁ……?
むしろなんか大丈夫そうなんだけど。
「なんか大丈夫そうだし。 自力でどうにか───そういえばひとつ気になったんだけどさ。 何故封印されてる割にここに来れてるんだ?」
『ハハハハハハハ。 いやぁ、封印されてたからさー。 我やること無くって。 しゃーないので精神系を極めてやろうとか考えたのだよ。 そうしたらさー。 極めすぎたぜ☆ その代わり魔法使いとしての戦い方全部忘れたぜ☆やばいぜ!』
「……そんな口調だったっけ君。 うーん、まぁいっか。 あれなんだよね、僕あんまりエルフとか興味無いし、後で滅んでもらう予定だったからさー。 放置でいい?」
『我涙何故理解不可。 元勇者人心無。 馬鹿阿呆!豆腐角頭衝突埋葬!』
耳元で騒ぎ出すミスティナ。
そこら辺は昔と何も変わりないのが、少しだけ懐かしさを覚えさせてくれている。
「───まぁわかった。 じゃあ場所を教えてくれ、そこに行けばいいんだろう?」
『私は感動している。 あのカエデ君が人の話を聞いてくれているなんてと。やはり人の心があるのが素晴らしい。流石は元勇者』
「───後で一回殴るけどね」
『んなぁ』
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【魔道国ユークリプス】
ユークリプス国内に存在する最大の魔道学院カルバス。
そこの談話室にて女と男が話をしていた。
片方の女はエルフ。
もう片方はドワーフ。
「ふん!相変わらず長耳のゴミは偉そうにしやがるな。 力じゃ人間に勝てないからって小賢しい事ばかり」
「へぇ? 頭の悪い哀れなグズ。 筋肉しか自慢する場所の無い馬鹿が何を言っている?」
訂正。
普通に会話じゃあ無くてレスバだったようである。
「ふん!ドワーフの。 それで進捗はどうなっている。あの魔法使いから搾り取れる分はどれぐらい搾り取った?」
「はっ!長耳。 100%ださっき伝えたことすら忘れたか!」
二人はだいぶ前からバチバチと火花を散らしながら、ぶつかり合っている。
二人の会話に登場した魔法使いの事で二人はしばらく話し合っていたのだ。
「じゃあ早く完成にしろ。 上がブチギレてるだろうが!他のエルフ共があの女の生命維持装置を外し始めてるんだぞ!早くしないと私たちが罰則をくらうことになるぞ!」
「黙れ小童! 最後のロードは案外時間がかかるって親から教わらなかったのか? エルフは優しさがない親ばかりってこったな!」
二人は互いに首根っこを掴んで殴り合いかけて、それからすぐに踏みとどまって睨みを効かせている。
もし初見でこの二人の関係を見たのならば、それはもう誤解を産みかねないので補足しておくが。
別にエルフもドワーフもう仲が悪い訳じゃあない。
ただこの二人がめっちゃ仲が悪いだけなのだ。
そしてこのふたりは、エルフとドワーフの長でもある。
そしてそれ故に誰も口出しできないのだ。
「……上の馬鹿共はなんと?」
「奴らは勇者の魔法と女神の魔法を完成させろとしか。 ううむ、あと少しなのだがなぁ……」
「本当だな。 あと少しってのはどうしてこうも上手く─────ヌゥッ!?何事!」
二人が睨み合いながら考えを巡らせていたその時、地下で爆発音が轟いた。
二人は顔を見合わせると、武具をすぐに手に取り、駆け出したのだ。
それが彼らの墓標になるとは、二人はまだ思いもしなかった。
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