第12話 カエデは邂逅を果たす

【カエデ視点】


「?!な、何を言い出すんだね君はっ!殺す?寝言は寝ていいやがれ!」


 そう言いながら武器を取ろうとした店主の腕に、僕は麻痺の呪いを放つ。

 当然それを受けたが故に、店主は武器を持つことも出来ず……ただ有り得ない。そう呟いて項垂れる。


 そしてそんな男の首根っこを掴むと、僕は壁に押し付け、そして尋ねる。


「君たちがさ、使ってるソレ。 勇者魔法だっけ? どこで手に入れたのか教えてくれないかなぁ?ん?」


 尋ねた理由は勿論、大元を特定する為である。

 こういった物事というのには、大抵の場合なんらかな人間もしくは因縁などが渦巻いて混じりあっているものだろう。


 それに対し店主は一瞬ぽかん、としたかと思うと。


「何を言い出すんだねぇ!?教えるわけないだろうが!!」


 そんな風に歯向かってきた。

 だが僕に近づく前に、グリムによりその動作は阻止される。


「あら、そんなに怒らない方がいいわ。 マスターの邪魔をするなら先に私が殺してしまうかもしれないから」


 グリムの手により、動きを止められた店主は困惑しながらも此方を睨みつけてくる。


「話をしようじゃないか。 僕は元勇者カエデという人間なのだけれどもね? 君達が何やら僕の魔法を販売しているみたいなのだが。 それを少し許せなくてさ」


「何を言っている貴様ぁ! 勇者カエデはもうとっくの昔にくたばった! それに対し知らないのか?この国では勇者の名前を使うと罰則があるのだぞ!」


「あ、そうなんだ。 じゃあ滅ぼそうっと」


 僕は唖然とする店主を無視し、色々と考えてみることにした。


 ……ううむ、尚更意味がわからん。

 さすがに僕の魔法を勝手に使ってるだけじゃなく、僕の名前を出すだけで罰則ってなんなのだろうかね。


 分からない話ばかりだ。



『…………おーい…』


 ん?考えすぎて幻聴すら聞こえてきてしまったとはな。

 少しだけ僕も疲れてしまっているとか、そう言う話なのかな?


『……だから聞こ……てる……だろ……?』


 ますます幻聴は耳元に近寄ってくる。

 さすがに僕も違和感というか、この現象は不愉快だったので周囲を探索してみることにした。


 すると、それはそこに居た。


『おー!やっと見つけてくれたんだね! やあやあ、久しぶりだよぉ。 私だよ私『ミスティナ』だよ!』


「………………は? ……」


 ちんまりとした鏡の中にそれはいた。

 ホログラムのような感じに若干透けて見えているそれは、紛れもなく──────。


「何してるんだ。 使!?」


 そう、かつての勇者パーティの魔法使いにして、フレンドリーファイアしかして来なかったあの女である。


『フハハハハハ! 久しぶりだなぁ勇者カエデ! この私が貴様の到来を予見していないわけが無いだろうが? フハハハハハお見通しだったのさぁ! まぁ私は君たちの前には居ないがねぇ!』


 甲高く、笑うその有様は30年前となんら……変わら……。


「?なんでお前、30と変わらないんだ?」


 別に彼女は普通の人間だ。

 それ故に普通に歳をとるし、普通におばさんになっているものだとばかり思っていたのだが?


『ぐふふふふふ! 貴様は私のことを何も分かっておらんなぁ! いいだろう!この私が直々に教えてやろう! 私がなぜ歳を撮っていないかと言うとだなぁ────────!ハハハハハハハ驚いたか!』


 ……えっと?


 封印?お前何をやったんだよ……。



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