第11話 カエデは門兵を潰すことにした
【カエデ視点】
ん?なんか誰かの高笑いが聞こえた気が……。
幻聴……にしては妙にリアリティと馴染みがあったり無かったり……。
「カエデ様の魔法をこんな風に売り物にするなんて、わたし許せません!」
そりゃそうだ。
僕だって腸が煮えくり返っているさ。
「まぁ、いいや。 一旦どういう話なのかを聞いた上で潰すとしよう」
僕はにこやかに、にこやかに言った。
*
「君たち、君たち……そこの2人組止まれ!──ここは関所だと言うのに何をスルーしようとしていたのだッ!」
関所の前で呼び止められた。
「誰だい君は」
僕の言葉に関所の前に座っていたおっさんが怒りの眼差しを向けて、近づいてくるじゃないか。
「誰、誰だとッ? 貴様にはこの紋章が見えないのか? 私は門番だ。 門番の言うことを聞かぬとは貴様ら不届き者であるなぁ?……だが、そこの女はかなり良さげの見た目をしておることだし───ううむ、その女を置いて行けば男だけは通し────ぎょぼっ?」
言い終わる前に僕は呪いの弾丸をその心臓にぶち込んだ。
魔法、『カースド・サイレンス・バレット』はこう言う時に使うものだ。
「ど、どうしましたっ?! そ、そこの人……この人が突然倒れて……」
僕はわざとらしく周囲の人間に助けを乞う。
当然ながら僕の声を聞き付けた他の門番(門兵)が集まってくるが……。
「『カースド・インビジブル・スチーム』」
僕の魔法により、作り出された霧の中に包まれて数秒後は皆揃っておねんねであった。
数秒の間にこの場にいた門兵を全て片付け、僕はそのまま門を潜る。
『ピーン! 不法侵入者を検知! 迎撃を開始します!』
『侵入者発見!』
潜った瞬間、門の中から魔法生物が大漁に召喚されて、襲いかかってくる。
まぁここもある程度予測済みだ。
「『カースド・フレア』」
唱えた僕の手の中に、炎が生じる。
だがそれは明らかに炎とは異なる見た目のものであった。
僕の手から生み出された炎はあっという間に魔法生物を飲み込んだ後、そのままその身が焼き尽くされるまで燃え続けることとなった。
「さてと。 こんなものだろう────おや?リティア、どうしたのかな?」
ふと、リティアを見ると斧を地面に置いて門兵を地面に引くと……そのまま斧を振り被ろうとしていたのだ。
「あ、えっと……その。 カエデ様には関係無いのですが……私が少しこの門兵に因縁がありまして……だからトドメを刺そうとしたのですが……」
「なんだ。 それなら先に言ってくれよ。君の為に残して置いておくのに 」
「?!そ、そそそそんな事を頼むなど恐れ多くて……私にはまだ出来そうにありません!」
えぇ?いや別にいいと思うけどなぁ。
門兵と魔法生物の記憶を処理した後、僕はひとまずの意味を込めて先程の魔法販売店を探すことにした。
きっと道の先に必ず奴らはいるのだと信じた上で。
「おっと、早速見えてきたけども。 果たして彼らの販売している魔法はいかほど─────あー。なるほ、ど」
見えてきたのは魔法販売店と書かれたシンプルな作りのお店。
地下に繋がる階段と共に『勇者の魔法販売中』と書かれていた。
そしてそのお店の近くではその魔法を買った人間と思わしき人物達が、光の剣やら光の武具を振り回しているところだったのだ。
「────マジの勇者魔法って訳か。 なるほどこれはもうマジで叩き潰さなきゃならないなぁコレは。ハハハハハハハ楽しいことになりそうだなぁ」
「カエデ、顔が笑ってませんよ?」
引きつった笑みを浮かべながら僕は静かに階段を降りて行くことにした。
「おや、いらっしゃいませぇ! 私のお店はバーミクス魔法販売店でございます! 今日は何用でございますかな? 勿論勇者魔法は全種類取り扱っておりまするぞ?」
髭が来た。
胡散臭そうな髭が来た。
僕はにっこりと微笑みながら、全力で顔を作って抑えて、気持ちを落ち着けて───。
「───今から、君を殺すよ」
ダメだった。
普通に抑えれなかった。
***************
次の話は明日になります。
今日は短かったのでね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます