第8話 勇者が反転アンチになりました

【カエデ視点】


 生き返った魔王の娘、リティアから聞かされた事に僕は唖然としてしまった。


 だって仕方ないだろう?

 まさか自分が助けた世界のヤツらの頭のおかしさを知ってしまったのだからさ!


「あの……、ちなみに現在の話なんですけど……その四つの国は全部敵対関係にありますね。 既にあちこちで戦争が勃発してます」


「────────はい? え、あ、うーん。 ごめん、ちょっと待って理解に苦しむんだけど」


 まずあれだよな?

 魔王がかつて世界を支配しようとしていて、それに勝てないから僕『勇者カエデ』が召喚された。


 んで、『勇者』の手で魔王及び魔王軍は壊滅させられた。

 これで世界が平和になる→じゃあ勇者が邪魔になったから殺す。


 ……ここの時点でだいぶアウト寄りなのに……?


 勇者の死後、今度は今まで世界を管理していた女神すら邪魔になったからエグい手段で弱体化→ころした?


 もうツーアウトだよこりゃぁ。


 で?挙句の果てに、何? 助けた国が今度は全部それぞれが敵対した?

 戦争しまくってる?


「あー。 なるほど、なるほど。 この世界の人間カスしか居ないの?バカなの死ぬの? いや死ぬか。 魔物と魔王の恐怖が無くなったから浮かれちゃった? 」


 僕は気がつくとこめかみをぐりぐりと押していた。


 ……こういう時に、前の地球ではストゼロとかを飲んでいたんだなぁ。僕も酒に溺れたいよほんとに。


 ってかもう分かったよ。

 要は戦争の原因どう考えても『勇者』『武具』『女神』『魔法』だろ。


 ここからは僕の推察が入るのだが、多分最初はそれぞれ山分けって形にする予定だったんじゃないかな?

 でも人は強欲だから、ほかの国の所有する力も欲しくなった、と。


 んで、その考えをほぼ全ての国が同時に持った結果、戦争が起きた。って事よな?


「バカヤロウしか居ないってのかよォ!!?」


 あまりの惨状に僕は最早叫ぶbotになりかけていた。


「落ち着きなさい。 私の貴方。 それは最初から知っていた事でしょう? だから今更何って話だと思わないかしら?」


 うっ、確かにそれはそう。

 そもそも呼び出したクセに僕の旅をサポートしてくれたのはほんのひと握りの人だけ。

 王族貴族連中はふんぞり返っていたか、怯えて引きこもっていたかのどっちかしかいなかったし。


 冒険者は邪魔でしか無かったし。

 ……仲間もほとんど役に立たないバカとど阿呆と、変人だけだったし。

 ────でも、そんな世界でも、から……救ってやろうって、思ったのに。

 学校でいじめられ、仲間はずれにされて。

 金を巻き上げられて、そして親から殴られてばかりだった僕に、価値を見出してくれた世界に、女神様に報いるために頑張ったのに。


「……あ〜。 うん、もういいや。 なんかもうどうでも良くなってきた。 世界とか、夢とか。 馬鹿馬鹿しい。 頑張った奴が生き返って絶望してしまうような世界に変えてしまったバカ共の事なんて、俺は大っ嫌いだ!」


 あまりに虚しさと、呆れから。


 僕は、吹っ切れた。


「そんなに自分達で戦争したいならさ。 作ってやるよ、その機会を!!」


「私の貴方。 何をするつもりなのかしら? 」


 グリムの問に、僕はほくそ笑みながら。


「決まってるだろう。 。 時間をじゃなくて、!」


 ****


「旅路をやり直す、ですか? でもそれってただの巡礼のようなもので……あ、わかりました!旅先で教えを説くんですね! 流石は勇者様!」


 リティアが自慢げにふんすふんすと答えるけれど、僕は違うよ?と返した。


「そんな事したって、彼らは変わらないよ。 『勇者が死んだ』『魔王が死んだ』『 女神が死んだ』…… そんな事を受けて、今度は自分らが支配者になるんだ!って息巻く連中に教えなんて無駄無駄」


「え、じゃあ……?」


「そういえば僕の旅ってさ、結構ハードモードだったんだよね。 それこそこの世界の人間じゃあ太刀打ちできないぐらいの強敵との戦いの日々だったんだけどさ────」


 僕はゆっくりと近くの木にもたれ掛かりながら、最高の回答を教える事にした。


事にするよ。 まぁ具体的に言うならば……『勇者の旅路を勇者抜きで攻略してもらおう』って事さ。簡単だろう?」


 ***


 そう、僕は旅路をやり直すことにする。

 ただループ物のように刻を巻き戻す訳じゃなくて、時系列はそのままで。


 だけが違う同じ旅をやってもらうって事さ。

 僕一人で攻略した旅路を、この世界の人間全てに押し付ける。


「そ、そんなことが……でも、魔物や魔族って全部倒しちゃったのでは……」


 リティアの言う通り、魔物も魔族もみんな倒されてしまっている。

 だけど少し違うんだよね。


 僕は聖剣エバーハートを使って、魔物と魔族をって形で始末していたんだよね。


 まぁ別にこうなることを見越していた訳じゃなくて、ただなるべく早く魔王を倒したかったから、封印という方法を駆使しただけなのだ。


 封印の方が労力が半分以下で済むからね。


 まぁ先送りにしていただけだから、ひょっとしたら数千年後辺りに唐突に蘇って大惨事になる可能性もなくは無かったんだけど、そん時にはもう自分居ないしいいかなって思ってさ。


「そして、そんな彼らを。 まぁ封印を解くって事だね。 そうして、この世界に再び前時代の厄災を呼び起こし、それを彼ら自らの手で対処してもらうようにする」


 実に最高な復讐だと思わないか?


 だってアレだぜ?

 なんの苦労もせずに、ふんぞり返って勇者の功績と努力の結果だけを享受していたクソ野郎共に復讐するならさ?

 彼らに僕の努力と苦しみを味わってもらうべきじゃないかな?


 まぁその結果世界が滅んでも、罪なき人間が犠牲になっても僕はもう知らない。

 元々僕が居なければ遅かれ早かれ、そうなっていたんだから、むしろこっちの方が自然だろうしね。


 ***


「な、なるほど…………流石は勇者様……」


「リティア、もう僕の事は勇者って呼ばないでくれ。 僕はただのカエデさ」


「わ、わかりました! カエデ様! 私、リティアは勿論最後までお付き合いいたします!!」


「そっか。 じゃあ、多分魔族の封印とかを解く際に魔族側と揉めるかもしれないから、そういう時の橋渡し役として頼んだよリティア」


「はいっ!おまかせください!!」


 リティアの満面の笑みをよそに、僕は最初にどこの封印を解くか、どこの国から滅ぼすかを考えていた。


 王国は最後にする、これは確定事項だ。

 まぁその為に恐怖を仕込んだユリウスを返したんだからな。


 ───法国は罰当たりすぎるが、そもそも遠すぎる。

 ここからかなり離れているし、そうなると。


「リティア、この近くの国って」


「えっと、ユークリプス魔道国です。 魔族の里の近くに一応ありますね」


「じゃあ、最初に目指すはユークリプス魔道国だな。 割と近くにあるのは助かるし」


 まぁどうせ、ユークリプス魔道国には『大魔法使い』がいるだろうし。

 アイツをぶっ飛ばすついでに、滅ぼしてやろうかね。


「それじゃあ、ここより始まるのは──かつて世界を救った勇者が反転アンチとなって世界を滅ぼす側になるお話だ!!世界よ、震えて眠れ」


 手を広げながら、僕はちょっびり恥ずかしくなりつつもそう口に出した。


「おおお!!!カエデ様!最高!…………ところで、反転アンチってなんですか?」


 *******


 ※反転アンチとは、かつて好きだった(つまりファン)だった人間(それもかなり陶酔してる)が、何かしらのきっかけを経て、アンチ行動に走るようになること。

 普通のアンチと比べて、かつて好きだったり、知識などが優れている為、余計にタチの悪い行動を起こしやすいのが特徴である。



 ******




 続きは夜に!


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