第4話 勇者はじゃまなもの
【勇者だった男カエデ視点】
何となくかっこいいというか、意味深な言葉を呟きながら登場してみたのだけども、めっちゃびっくりしてて面白い。
ひとまず副団長アルベルトとか言うやつは無力化した。
そしてその肉体を掴むと……ぽいっ、と投げ捨てる。後で贄になってもらう予定だから万が一巻き添え食らわせたく無いんだよね。
「き、貴様ァ!! なぜ、なぜ生きている!! まさかその魔道具……私達を幻覚ではめたな!?幻覚魔法の魔道具を使うとは、勇者の風上にも置けないこの外道め!」
うーん、外道ねぇ。
いや僕に散々事後処理やら住民の対応やら、アイテムの処理やら魔族の封印やら、全部対応させたくせにその手柄をさも自分達の活躍ですよ〜感出して奪っていった君たちが言うかね。
と言うかもし僕が外道なら君達はなんだ?……外外外道とかかな?ひょっとしたら畜生道とかの生き物かも知んないね!
「だったらどうするのさ。 君たちはよくもまぁ、僕を散々コケにしてくれていたじゃないか。 だから蘇った僕が君らを散々な目に合わせるのは正当な権利だろう?」
「死体が喋るな! 反吐が出るっ! ……しかし、くははははははっ!君も相変わらずだなぁ!───そんな魔道具があるならば、さっさと眠っている間に殺せば良かったのにねぇ!!」
突然叫ぶな。
というかこいつずっと舐め腐ってるんだよなぁ。
「───出来ないんでしょう!? えぇ、なぜなら私の体には多重結界が幾重にも張り巡らされていますからねぇ。」
そう言っていきなり勝ち誇った顔をしだしたユリウス。
どうやら僕が何もし無かったのを、何も出来なかったからと誤解した様子だ。
うーん、訂正してあげたいけど……まぁもう少し気持ちよくさせてあげよっかな。
「────くっ!バレていたか。」
「ふはははははっ!! それにその魔道具、きっと使い切りアイテムでしょう? 何処から見つけてきたのかは知りませんが、それが無くなった時貴方は再びあの世に送られるのですよ!───まぁ、わたしは慈悲深いのでねぇ? あえてあなたをここで殺しはしませんよォ!」
あ〜。盛大に勘違いしだしたよ……。
別にこのアイテム使い切りじゃないし、時間制限も無いし、そもそもお前の生殺与奪の権利を握ってるのは僕の方なんだけどねぇ。
「しかし、貴方は残念なお方ですねぇ。 あー、いえ……運がないとでも言いましょうか! 実はこの魔族の里に、もうすぐ王国軍の大軍隊がやってくるのですよ!」
ふーん。 聞いてもいないのに、割と重要そうな事を喋りだしたんだが?バカなのかなこの人。
や、まぁ助かるけど。
「な、なにぃ!? お前ら、人の心はどこに置いてきたッ! 俺との約束はどうなった!」
うーん、我ながらナイス演技。
迫真のブチ切れ&動揺してる人間ぽさは出せたかな?
「ヒャハハハハ!! 君との約束なぁんて、君が死んだその日に既に破られてますよ! 残念だったねぇ!!」
テンションが上がったのか、饒舌さを増していくユリウス。
別にあいつらの酒盛りを見ようと思ったことは無かったけど、きっとこいつは酒を飲んだらこうなるタイプの人間だったのだろうな。
「王様……なんで……」
「王は勇者の死をたいそう喜んでおられた!お姫様も、王女様も、そして諸国の公爵たちも同様に! 」
楽しそうだなぁ。暫くは話させてやるつもりだったし、割と重要そうな事も聞けたし。
まぁじゃあそろそろ殺すか。
*
【賢者ユリウス視点】
やはり勇者は力を失っている。
その証拠に、これだけ煽り散らかしているのに一向に動きがない。
ただ、魔道具による妨害を防げなかったのはさすがに痛かったけど……まぁそれも結界の条件を変更すれば無効化できるし。
……まぁまずは魔道具の無力化をしてから、じっくりといたぶりたいところですけどね。
わたしは牙を抜かれた勇者を見下しながら、杖を構えた。
「その魔道具も、ほかの魔道具も使わせないようにしてやろう。 『
魔法が放たれた瞬間、視界が元に戻っていく。
きっとあの鈴が無力化されたからだろう。
「な!? そんなッ!」
それだけじゃない、今の魔法は私が貼った結界の中において魔道具の使用を禁じるもの。
そしておそらく武装がないから魔道具を使用していたであろう勇者カエデにとって、この魔法は致命傷となるはずだ。
「く、くそっ! 魔道具が使えない!! ち、ちくしょう!!」
「くははははははっ!!じゃあ、そろそろ殺して差し上げよう。 さっきの気持ちよさを、現実でも味わわせてくれるなんて、実に君は優しい勇者だったよ。 じゃあなぁ!来いっ『
私の魔法に合わせて、空の彼方から
夜に煌めく光の精霊、その頂点とも言うべきソレは、ちっぽけな勇者目掛けて武具を振り下ろす。
「じゃあなぁ!! 勇者カエデ!! 無駄に復活して、俺の快楽のための犠牲となれ!!」
────勝った。
流石にこの状況からあの勇者カエデができることなど無いはずだ。
そう思っていた私の前で、勇者カエデの腕の中が突如……真っ黒に光った。
*
【勇者だった男カエデ視点】
「─────まぁじゃあ仕留めるか。 カースド・ライトニング」
僕は自分に武器を振りかぶる精霊天帝とか言う奴に向けて、手を伸ばし……魔法を唱えた。
直後、手の中から放たれたのは真っ黒な雷。
ソレは一筋の闇の槍のように、その精霊天帝の胸元につき刺さった。
『………………………………!?』
そして、精霊天帝は爆散してその存在を消滅させた。
続けて、僕は唖然としている賢者ユリウスに向けて手を構え……魔法を唱える。
「カースド・レイ」
手の中から放たれた真っ黒なビームは、ユリウスが散々自慢していた魔力結界を────紙切れのように簡単にぶち抜く。
「は ?」
そうしてそのまま倒れかけるユリウスの髪の毛をグイッと持ち上げて、腕を潰す。
「!?あ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ?!い、痛いっ!?」
「大人が騒ぐなよ。 みっともない」
腕を潰されたユリウスは、ただ呆然と立ち尽くしている。
そんな彼に向けて、僕はさらにいくつかの言葉を投げかけてあげることにした。
「まぁ別にいいだろ? だってその体スペアボディだろ。 どうせ本体は女侍らせてお世話してもらってる最中だろ」
「な、な訳が……そ、それよりも貴様ッ、何をした!?」
別に隠してもいいけどバレてるよ?
そもそも賢者の力は僕がよく知ってる。
聖剣が無駄にそちら方面の知識を教えてくれたからね。
「何をしたって?……魔法を使っただけだけど?あ、ひょっとして僕が魔法を使えないと思ってたの? 純粋だねぇ君」
唖然としすぎて、バカにすら見えてきたユリウスに向けて、僕はタネ明かしをしてあげる事にした。
*
「僕ってさ、異世界人なんだよね。そして僕が住んでいた世界では、転移者や転生者には、特別な能力が授けられる事が知られていたんだ 」
「な、なんの話しを……」
「いやぁ、まぁ例に漏れず僕もそうだったんだよね。 僕もあっちの……まぁ前世からこっちに来る迄の間に女神様に会ってさ? チート能力を授かってたんだよねぇ」
「ち、チートとは何だ!? それに人の分際で女神様に会っただと!? 嘘をつくな!」
僕は一旦、ユリウスの言葉を無視する。
こいつと話すと会話のテンポが悪くなる。
「だけどさぁ……僕、こっちの世界に来た瞬間に聖剣を持たされてさ? そして与えられちゃったんだよね。 勇者っていう
「ソレは素晴らしいことなはず!勇者は最高の称号と力を人間に与えるものだ!」
「うん、素晴らしいと思うよ。 その勇者にされた人間が普通の人ならね。 残念なことにさ、僕最初からチート能力持ちだったんだよね。 なのにさぁ─────勇者とかいう邪魔なテクスチャを張りつけられたから、能力が全部使えなくなったんだよ?酷いよねぇこれ」
そう。
僕は元々チート能力者として転移して来た。
だけど転移者として呼び出された瞬間に、勇者の力にそれらを全て上書きされた。
その結果最強無敵のチート能力を封じられてしまっていたって訳だ。
まぁ要するところ、最強の筈が邪魔な聖剣と勇者という役割を付与された事で、ただの勇者に成り下がってしまったってだけの話だよ。
まーつくづく思うよ。
運がねぇなぁと。
*
「そしてそんな邪魔な聖剣は僕の手元に戻ってこない。 つまり勇者の役割はもう機能していない!! じゃあもう自由にチート能力を使ってもいいだろう?」
そう言うと、僕は手の中に自分の魔法を呼び出す。
「さぁ、賢者ユリウス。 僕の魔法をしっかり当ててくれよ? 君は得意だろう、そう言う解析とか。 ちなみにチャンスはあと1回。 精々頑張りなよ?」
◇◇◇◇
次回、ヒロイン登場。
乞うご期待ください。
と宣伝しておきます。
面白かったり、ふーん?少し気になるなぁ?
と思ってくださった方はぜひ☆☆☆もしくは♡やコメント等をよろしくお願いします。
作者はそれを見て次の話を作るモチベーションにしておりますので、ぜひ。何卒。
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