第4章…女

どうしてもエロい目で見てしまいます

 楓ちゃん曰く、俺は今はまだ楓ちゃんを恋愛対象として見ることはできないらしいのだが。

実はそうでもないみたいだ。楓ちゃんが思っているより何倍も、俺は女好きで惚れっぽい男だったらしい。


結論から言えば、俺は楓ちゃんのことをメチャクチャ意識している。俺が認めなくても俺の肉体がそう言っている。特に股間が。

もう何度も楓ちゃんにドキドキさせられたし勃起させられた。ガキじゃねぇんだ、自分の気持ちくらいすぐにわかる。

これはもう楓ちゃんに惚れていると断定していいだろう。


惚れた……惚れてしまった。

元カノにフラれたばかりなのに、新しい恋をしてしまった。


俺ってチョロすぎか? 軽すぎか? でも楓ちゃんマジで可愛すぎるって、あんなん卑怯だって。楓ちゃんが可愛すぎるのが悪い、俺は悪くない!



…………

いい歳して言い訳すんな。年下の女の子のせいにして自分は悪くないとか言い出すの控えめに言ってゴミである。


とにかく楓ちゃんのことが好き。

―――でも、雲母のことも忘れられない。


もうフラれたんだから、キレイさっぱり忘れてメモリーを消去するべきなのに。楓ちゃんへの気持ちを自覚する度に、1が雲母を推してくる。7年間の雲母との思い出が鮮明に思い出される。

もう1人の自分に『雲母を忘れるなんて許さねぇぞ』って言われてるみたいだ。


あんなに酷いフラれ方したのに。普通なら100年の恋も冷めるレベルの仕打ちを雲母から受けたのに。それでも今も、俺は雲母が好き。



これは、二股か? 最低だな俺。

元カノに未練タラタラな俺が楓ちゃんと恋愛する資格があるとでも思っているのか。自己嫌悪感と罪悪感に押し潰されそうになる。


とにかく今の状態ではとてもじゃないが楓ちゃんの気持ちに応えるわけにはいかない。あまりにも失礼すぎる。


今すぐには無理だが、なんとか雲母への想いを断ち切らなければ。

楓ちゃんは待っててくれると言ってくれたが、彼女の優しさにいつまでも甘えてられない。できる限り早く、変わらなくては。


とりあえずまずは1人の時間が欲しい。じっくり考えたい……



「涼くん、学校行こっ」



星光院学園で働くことになって3日が経った。

今日もまた楓ちゃんは強引に俺を引っ張って学校に連れて行く。


1人の時間が欲しいとは思っているが、楓ちゃんはそんな時間は与えてくれないようだ。



「あの、楓ちゃん、今日はちょっとお休みをもらえないかなー、なんて……」


「え、なんで? まさか体調悪いの!?」


楓ちゃんはすごく心配そうな表情で俺にズイッと詰め寄ってきた。彼女を心配させてしまって俺の心は痛む。


「あ、ごめん……体調悪いとかではないけど……」


「じゃあダメ。ホラ、行くよ」


ですよねー。恋の悩みで仕事を休もうだなんてふざけんなって話だよね。恥を知れって感じだね、うん。




―――




 学校に到着し、俺は今日も掃除の仕事を行う。

数日経ってもまだ清掃係だ。俺はただ与えられた仕事を頑張るのみだが、そのうちもっといい仕事をもらえたりすんのかな。まあとにかく頑張ろう。


今日は体育館の周りの掃除をする。

この学校は体育館もすげぇ。外からしか見てなくて中はまだ見てないけど外から見た光景だけですごいとわかる。

体育館もまた広いなぁ。俺の母校の体育館より明らかにでかいんだ。でかくてオーラもすげぇんだ。間違いなく俺にこの体育館に入る資格はない。外から眺めてすげぇって言うことしかできない。


このすげぇ体育館を美しく保つ。うん、重要な仕事だな。手抜きせずにちゃんとやらなければ。



集中して掃除する。掃除はかなり集中できる。俺、清掃業向いてるのかもしれない。

もっと集中しよう、煩悩を捨てよう。


雲母のことを引きずったまま楓ちゃんに手を出してしまう、それが最低最悪のパターンだ。それだけは絶対に回避しなくてはならない。


そのためには楓ちゃんをエロい目で見てはいけない。楓ちゃんは反則級にエロくてもうすでに何度も悩殺されてるけどこれからはできる限りエロい目で見ないようにしなくては。

一緒に住むことになったのに今のままでは我慢できるわけがない。精神の修業が必須だ。俺にとっては精神統一に一番効果的なのはこの掃除である。

俺もまだまだ精神が甘い。掃除でもっと集中して無心になるのだ、集中集中……



ワーッ、ワーッ


ん? 体育館内が騒がしいな……体育の授業中かな?

よく見ると体育館の入口の扉が少し開いていて、俺はなんとなく中を見てみた。

中に入るのは許されないだろうが少し見るだけなら許してくれ。



「―――……!!」



楓ちゃんだ。楓ちゃんがいた。

楓ちゃんはもうオーラがすごいから遠くから見てもすぐにわかる。

20人くらいはいるのにすぐに楓ちゃんを見つけることができるとか、俺が楓ちゃんに惚れてる説がさらに増強されてしまった。


というか、楓ちゃん……体操服姿だ……!

体育の授業なんだから当たり前だろとは思うが、とにかく体操服姿だ。

成人済みの大人ではめったにお目にかかることのできない体操服姿の女子生徒が、確かに俺の視界に存在している。



体操服を着た楓ちゃんも可愛すぎる。

運動中ということで長い金髪をポニーテールにしている。ポニテ楓ちゃん神だ。

体操服だとスタイルの良さもハッキリと出ている。ピチピチな白い太もも、スラリとした美しい生足、プリンとしたお尻、そして豊満な胸の膨らみ……俺の視線は楓ちゃん以外何も見えないくらい釘付けだ。



あ……ダメだこれ。無理だ。

この瞬間でもう悟った。楓ちゃんをエロい目で見ないようにするというのは、無理だ。


体操服な彼女を前にしては、俺の精神統一など蚤の糞にも値しない。

楓ちゃんをエロい目で見ないようにするという俺の目標は諦めなくてはならない。うん、無理なものは無理だ。世の中にはどうあがいてもどんなに努力しても叶わないものがある。それは楓ちゃんの女体だ。



今はバレーボールの授業をしているようだ。

今ちょうど楓ちゃんが試合に出た。


ボールが楓ちゃんに飛んだ。楓ちゃんは大きくジャンプする。



―――たゆんっ


「!!!!!!」



楓ちゃんのでかい胸が揺れた。

ポニテのゆるふわな金髪もふわりと揺れる。


その瞬間、俺は瞬きもせずに目に焼きつける。視覚で捉えた映像のすべてが反射的に股間に集中した。



「―――はっ!!!!!!」



気合いの入った声とともに楓ちゃんの力強いスパイクが相手のコート上を切り裂いた。


すげぇ音がした。この一つのプレイだけで楓ちゃんの運動神経が超絶優れていることがよくわかる。俺を引っ張る時の力もすげぇ強かったし握力もすごかったし。


可愛い、エロいだけじゃない。かっこいい。

俺は楓ちゃんに見惚れて動くこともできない。



「あれ、覗きですか?」



!!!!!!


背後から女の子の声がして心臓が止まるかと思った。

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