第3章…学校
楓ちゃんの学校に行くことになりました
※涼馬視点
「おはよう、楓ちゃん」
「えっ、あ、おはよう涼くん」
翌日の朝、俺は昨日よりも早めに起きて楓ちゃんに挨拶した。この家やっぱり超広くて彼女を探すの少し時間がかかったけどなんとか見つけられた。
楓ちゃんは少し頬を膨らませて不満そうな表情をした。超可愛い。
「どうかしたか楓ちゃん」
「涼くん、今日は起きるの早いんだね」
「ああ、住まわせてもらってる立場で遅くまで寝ているのもどうかと思ってな。反省して今日は早く起きた」
「そんなの気にしないで遠慮なくずっと寝ててくれていいのに……今日も私がキミを起こしてあげたかったのに……」
楓ちゃんが不満そうな理由はそれか。
まあ俺が早起きした理由も本当はそれなんだけどな。昨日のように上に乗られて胸を押しつけられたりしたら理性がいくらあっても足りねぇんだよ。
今日は俺が楓ちゃんを起こしてあげようかなとも思ったんだが、楓ちゃんは昨日と同じようにもうすでに制服もバッチリ着ていて支度を済ませている。俺が一番早く起きるつもりだったのに彼女に先を越されてるっぽくてちょっと悔しい。
「楓ちゃんは……何時に起きてるんだ?」
「遅くても6時には起きるよ」
早いなぁ……俺が今日起きたのは7時だ。会社勤めをしていた頃も6時までに起きることはほとんどなかったぞ俺は。
「楓ちゃん、学校に行くのは7時半くらいだろ? そんなに早く起きなくても大丈夫なんじゃないか?」
「ふふふ、甘いね涼くん。女の子は準備に時間がかかるものなんだよ。
メイクだって手抜きをしたことは一度もない。常にバッチリ仕上げているの」
そう言って楓ちゃんはふふんと自慢げな表情をする。
確かにナチュラルメイクが完璧に施されている。俺男だしメイクのこととかさっぱりわからんが、彼女のメイクが完璧なのはわかる。これ以上ないくらい可愛いから。
特に、リップが塗られて程よく潤いを持った柔らかそうな唇が……
…………楓ちゃんの唇を見たら昨日キスされたことを思い出して、股間がピクッと反応してしまった。
本当に可愛い女の子って、唇だけで男を勃たせられるものなんだな……いや、俺が唇フェチなんだろうか? 雲母とキスした時もすごく興奮したし……
「どうしたの涼くん」
「いやっ、なんでもない……!」
俺は慌てて目を逸らす。彼女の唇を見て勃起したなんて死んでも言えるわけがない。
本当にしっかりしろ、俺……俺は彼女の兄のような存在になるんだ。自制心を持て。そして息子は空気を読んで自重しろ。
ガシッ
!?
楓ちゃんは俺の顔を掴んで無理やり自分の方へ振り向かせた。
バッチリ目が合って心臓が飛び跳ねる。
「ねぇ涼くん、ちゃんとこっちを見てよ。話の流れ的に私のメイクの感想とか言うべきなんじゃないかな?」
「すっ……すごく似合ってる、可愛い……!」
俺の心の底からの本音。楓ちゃんは満足そうに妖艶に微笑んだ。
「私ね……いつもメイク頑張ってるけど、涼くんと再会してからは特にメイクに力を入れてるんだよ。キミに見てほしいから、キミに褒めてもらいたいから」
「ッ……!!!!!!」
何なの? 俺の心臓に恨みでもあんのか? もう心臓が機能できねぇんだが。ドキッ! って感じを通り越してドキュゥゥゥン!! って感じなんだけど。
楓ちゃんは直球すぎる。普通は本人に言わないだろってこともハッキリと伝えてくる。
俺もそうだった。雲母に愛の言葉をハッキリ伝えすぎた。そしてフラれた。
俺もそうだったから、楓ちゃんのストレートは俺に超効く。
俺は照れて、顔を見られたくなくて手で隠した。なんとも情けない。年下の女の子にここまでいいように翻弄されて……
楓ちゃんが学校に行く時間になった。
俺は昨日と同じように、玄関で学校に行く楓ちゃんを見送る……
ガシッ
「ん?」
楓ちゃんに腕を掴まれ、引っ張られる。
「ど……どうした楓ちゃん」
「今日は涼くんも一緒に行こっ」
「……どこに?」
「学校に決まってんじゃん」
「!?」
え、俺も行くの!? 楓ちゃんが通っている学校に!?
どういうことだ!?
「いや、ちょっ、ちょっと待て楓ちゃん!」
「なに?」
「なんで俺が学校に行くんだよ!」
俺とっくに成人済みだぞ。高校はとっくに卒業したぞ。なのになんで学校に連れていかれるんだ。
待てって言ったけど待ってくれない。楓ちゃんは構わず俺を引っ張っていく。
俺は彼女の手から離れようとしたが、彼女の力が強くて離れられず、抵抗しても止められない。ズルズルと引きずられていく。
「おい楓ちゃん、待てって言ってるだろ! 俺を学校に連れてかないでくれ!」
「大丈夫、車で乗せてってもらうし交通費とかかからないから。かかるとしても私が出すから」
「そんな心配はしてねぇよ! 俺を学校に連れていく理由を教えてくれよ!」
「んー? ヒミツ。学校に着いてからのお楽しみ」
「なんだそりゃ……とにかく俺はイヤだから! 学校に行きたくない! 家に帰る!」
不登校の引きこもりみたいなことを言ってしまってるが、成人済みで制服も着てない俺が学校に行ったら浮くだろ。不審者扱いされるだろ、そんなん冗談じゃない。
「ダメ。涼くんは私と一緒に学校に行くの。涼くんは私のペットなんだから、拒否権はないよ」
「うっ……」
ペットになる約束をしてしまった以上、そう言われると逆らえない。
俺は抵抗するのをやめ、おとなしく楓ちゃんに連れていかれる。
前にも乗った高級車が停まってあって、前にも会った運転手さんがいて、俺は楓ちゃんと一緒にその車に乗り込んで出発する。
やっぱりこの車緊張する。ホコリ一つも残してはいけない空気を感じる。
「そんな警戒しなくても大丈夫だよ。涼くんの悪いようにはならないから」
「しかし……俺はペットなんだろ? 一体何をされるか……」
そうだ、俺はペットになる覚悟を決めなくてはいけない。どんな扱いをされてもたとえ人権がなくても、彼女からもらった恩を返すために途中で逃げ出したりなんかしないぞ。
「ねぇ涼くん、何か勘違いしてない? 私はペットには優しいよ?」
「そうなのか? ペットって言われたからなんかこう……縄で縛られたりとかムチで叩かれたりとか、そういうことをされるものだと思っていたんだが……」
「なーに? 涼くんは私にそういうことされたいんだ?」
「なっ、違っ……!」
ああっ、その表情なんかエロい……! 一言で言うなら小悪魔な感じ……そんな色気を帯びた視線で俺を見ないでくれ……
クスクスとからかわれ、ただでさえ緊張している俺はさらに縮こまる。
「ふふっ、大丈夫だって。私は絶対にキミを傷つけたりしない。
キミが私だけのものである限りは、ね」
―――ドキッ
また、小悪魔な表情。魔性の美少女という言葉が彼女によく似合う。
彼女は天空を舞う蝶のような存在。しかし今この瞬間だけは、蜘蛛のようだった。
俺は巣にかかった獲物。ほぼすべてを縮こまらせた俺だが、股間だけはドクッと脈動していた。
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